徹底検証! 建築パース・CGパース制作に最適なのはMacとWindowsどっち?

徹底検証! 建築パース制作に最適なのはMacとWinどちらなのか

「建築パース・CGパース制作において、WindowsとMacはどちらが適しているか?」と問われれば、答えはもちろん「Windows」である。なぜなら、建築パースは主に3DCGソフトを用いて制作され、この分野ではWindowsの利用が圧倒的に優位であり、ユーザー数も多い。

それでも、Macを使用することのブランドイメージは魅力的であり、Apple製品を利用して建築パースを制作したいと考える方も少なくないはずだ。筆者自身、PerformaシリーズからMacを使い始め、約20年以上Macを使ってCADや3DCGソフトを利用してきた。しかし、Macでの3DCGの限界を感じてしまい、5年前にWindowsへと完全移行した。

この経験を基に、MacとWindowsの違いを深掘りして、それぞれのプラットフォームの特徴を解説する。Macで建築パース制作を行う際の可能性も探り、読者が自身の目的に最適な選択ができるような情報を提供していこうと思う。

目次

1. Macで建築パース・CGパースを制作するには

Macで建築パース

この章では、Macでの建築パース・CGパース制作の概要、利用可能な3DCGソフトウェア、それに伴う利点と制約を掘り下げていく。クリエイティブ業界では広く支持されているMacだが、実際に建築パース制作においてはどのようなパフォーマンスを発揮するのか、詳しく見ていこう。

1-1. Macで利用できる3DCGソフト

MacOSで利用可能な3DCGソフトウェアはいくつかあるが、その中でも特に注目すべきはBlender、TWINMOTION、そしてCinema 4Dである。これらのソフトウェアは各々が独自の強みと特徴を持っており、ユーザーはそれぞれのプロジェクトの要件に応じて選ぶことができる。

□ Blender(ブレンダー)
Blenderはオープンソースの3DCGソフトウェアであり、その汎用性と拡張性の高さが魅力的だ。3Dモデリング、アニメーション、レンダリングといった幅広い機能を提供しており、初心者からプロフェッショナルまで広く使われている。特にコストパフォーマンスに優れ、無料でありながら高度な機能を利用することができる

Blenderについてはこちらの記事で詳細を解説している
>>>【初心者向け】Blenderとは?建築CGパース制作者目線で紹介

□ Cinema 4D

Maxonによって開発されたCinema 4Dは、モーショングラフィックスと視覚効果の分野で高く評価されている。ユーザーフレンドリーなインターフェースと強力なレンダリング機能が特徴で、広告業界や映画産業での需要が高い。

Cinema4Dについてはこちらの記事で詳細を解説している
>>>【初心者向け】Cinema4Dとは?建築パース制作者目線で紹介

□ TWINMOTION

建築、都市計画、造園の専門家向けに設計されたビジュアライゼーションソフト。エピックゲームズによって開発され、リアルタイムレンダリングとシンプルなインターフェースにより、複雑なシーンでも直感的に作業を進めることが可能であり、近年ユーザー数を増やしている。

株式会社アルファコックスさんのサイトでは、TWINMOTIONについての情報がまとめられている。

1-2. Macで建築パース・CGパースを制作するメリット

メリット
システムの安定性セキュリティデザインとブランディング

Macを使用する最大のメリットは、そのシステムの安定性とセキュリティの強固さにある。Appleがソフトウェアの開発からハードウェアの設計、システムの更新までを一貫して管理しているため、セキュリティ面での利点をもたらしている。

システムの安定性:
Mac OSは統合されたハードウェアとソフトウェアによって非常に安定した運用が可能である。この安定性は長時間にわたる複雑な3DCG作業や、大規模なファイルの扱いにおいて特に顕著である。システムのクラッシュや不具合が少なく、重要なプロジェクトの締め切りに迫る中でも、技術的なトラブルによる遅延のリスクを低減することができる。

セキュリティ:
Mac OSのセキュリティは業界内でも高く評価されている。このOSはウイルスやマルウェアの脅威に対して強い免疫を持っているとされており、これはクローズドなシステム設計によるものである。セキュリティが強化されていることで、機密性が求められる建築データやクライアント情報を扱う際にも、安心して作業を進めることができる。

デザインとブランディング:
Apple製品は、その洗練されたデザインで認知されている。それだけでなく、高品質でプロフェッショナルなイメージはクライアントに対しても好印象を与え、特にデザインを重視する業界でのプレゼンテーションや会議の場で、その影響力を発揮する。Macを利用しているというブランドイメージは強力である。

1-3. Macで建築パース・CGパースを制作するデメリット

デメリット
カスタマイズの限界価格と性能のバランス対応ソフトウェアの制限

ハードウェアのカスタマイズが難しい:
Appleの製品は美しいデザインと高い品質で知られているが、その多くではアップグレードが困難または不可能である。そのため、購入時に選んだスペックに長期間縛られ、要求が増すであろう将来的なプロジェクトに対応するための柔軟性がない。例えば、メモリ、ストレージやCPUのアップグレードが必要になった場合でも、新しいマシンを購入する以外に選択肢がないことがある。

価格と性能のバランス:
Macはその機能性とデザインにおいて多くの利点があるが、価格面で見ると同等の性能を持つWindowsマシンに比べて高価である。特にプロフェッショナルな用途に必要な高性能マシンの場合が顕著で、Macがあまりにも高額なため、Windowsと比べるとコストバランスがあまりよくない。

対応ソフトウェアの制限:
Macは多くのクリエイティブなソフトウェアを利用できるが、建築CGパース制作に特化したプロフェッショナルな3DCGソフトウェアの中には、Windows専用のものが少なくない。Macユーザーはこれらの高機能ツールやそのアウトプットを利用できない場合があり、制作の選択肢が限定される。

2. Winで建築パース・CGパースを制作するには

Windowsで建築パース

この章では、Windowsで利用可能な主要な3DCGソフトウェアの概要と、Windowsを使用することのメリットおよびデメリットを掘り下げていく。コストパフォーマンス、ハードウェアの選択肢の広さなど、Windowsが建築パース制作に最適な環境である理由を詳細に解説していく。

2-1. Winで利用できる3DCGソフト

Windowsプラットフォームでは、建築CGパース制作に適した多様な3DCGソフトウェアが利用可能で、それぞれ異なる機能を提供している。ここでは、特に注目すべきいくつかの主要なソフトウェアを詳細に掘り下げる。

□ 3ds Max

Autodesk 3ds Maxは、モデリング、アニメーション、レンダリングのための包括的なソリューションを提供する。このソフトウェアは、特にビジュアライゼーションとアニメーションの詳細な制御が求められる建築業界やゲーム開発で広く使用されており、その高度な機能は複雑なシーンの作成を可能にする。高いライセンス費用がかかるものの、その機能の広さと深さはプロフェッショナルユーザーにとって重要な投資となる。

3dsMaxについてはこちらの記事で詳細を解説している
>>> 3dsMaxとは?プロの建築パース制作者の目線で特徴を紹介

□ Lumion

Lumionはリアルタイムの3Dビジュアライゼーションソフトウェアであり、建築家やデザイナーがリアルタイムで美しいビジュアルを作成するために広く使用されている。特に建築ビジュアライゼーションにおいてその強みを発揮し、簡単な操作で高品質なレンダリングを速やかに生成することができる。Lumionは、ユーザーが直感的に操作できるインターフェースを持ち、大規模なモデルでも迅速に複雑な環境とシナリオを設定できるため、プレゼンテーションやクライアントへの提案時に非常に役立つ。

□ SketchUp

SketchUpはその使いやすさで広く知られており、初心者でも直感的に操作が可能である。このソフトウェアは低コストであり、簡単に複雑なデザインをモデリングできるため、教育用途や小規模プロジェクトに特に適している。迅速なプロトタイピングが可能で、短時間での設計変更が求められる場合に理想的だ。

株式会社アルファコックスさんのサイトでは、SketchUpについての情報がまとめられている。

また、こちらの記事でSketchUpについて詳細を解説している
>>> 【初心者向け】Sketch Upとは?建築パース制作者目線で紹介

2-2. Winで建築パース・CGパースを制作するメリット

メリット
パフォーマンスと拡張性コストパフォーマンスハードウェア選択肢の広さ

Windowsを使用することには多くのメリットがあり、特に建築CGパースの制作においてはそれが顕著だ。

パフォーマンスと拡張性
Windowsマシンは、高性能なコンポーネントで構成可能であり、ユーザーのニーズに応じたカスタマイズが容易である。そのため、最新のグラフィックカードや高速プロセッサを使用して、要求の高い3DCG作業を高速で処理することができる。例えば、複雑な建築ビジュアライゼーションや詳細なシミュレーションが必要なプロジェクトでは、カスタマイズされたマシンが重要な役割を果たす。

コストパフォーマンスの優位性
Windowsマシンは、同等の性能を持つMacに比べて一般的にコストが低い。これは、さまざまなメーカーから選ぶことができるため、予算に応じた最適なハードウェア選択が可能となるからだ。特に予算制限が厳しいプロジェクトや起業初期の設計事務所にとって、コストパフォーマンスは非常に重要な要素である。

ハードウェア選択肢の広さ
Windowsは幅広いハードウェアオプションに対応しており、ユーザーは自分の要求に最適な構成を選ぶことができる。そのため、プロジェクトで要求される性能を確保しやすい。また、ユーザーは新しい技術が登場するたび、システムをアップグレードすることができるため、技術の進化に柔軟に対応することが可能である。

2-3. Winで建築パース・CGパースを制作するデメリット

デメリット
セキュリティ問題システムの不安定さインターフェースの複雑さ

Windows環境で建築CGパースを制作する際に直面する主なデメリットには、セキュリティ問題、システムの不安定さ、およびインターフェースの複雑さが含まれる。

セキュリティ問題
Windowsは世界で最も普及しているオペレーティングシステムの一つであるため、サイバー攻撃の主要なターゲットとなる傾向がある。マルウェア、ランサムウェア、その他のサイバー脅威はWindowsユーザーにとって常にリスクをもたらす。この問題に対処するためには、定期的なセキュリティアップデートの適用と信頼できるアンチウイルスソフトウェアの導入が不可欠である。加えて、ファイアウォールの設定や、疑わしいソフトウェアや電子メールの添付ファイルから保護するための適切なセキュリティ対策が求められる。

システムの不安定さ
Windows環境は、特にカスタマイズされたシステムや多数のアプリケーションが統合されている場合、不安定になることがある。互換性の問題やドライバの不具合が原因でシステムクラッシュが発生することがあり、これがプロジェクトの遅延やデータ損失につながることがある。これを防ぐためには、定期的なシステムチェック、ドライバの更新、不要なソフトウェアの削除といったメンテナンスが重要である。また、適切なバックアップ戦略を確立しておくことも、データ損失リスクを軽減するためには欠かせない。

インターフェースの複雑さ
Windowsのユーザーインターフェースは高度にカスタマイズ可能で、多機能であるため、新しいユーザーや技術に詳しくないユーザーには扱いが難しいと感じられることがある。特にシステム設定やトラブルシューティングには技術的な知識が必要とされることが多く、非常にわかりづらい。ユーザビリティを向上させるためには、カスタマイズを最小限に抑え、シンプルな操作環境を構築することが必要だろう。

3. 建築パース・CGパース制作における MacとWinの比較

MacかWinか

建築CGパース制作において、MacとWindowsにはそれぞれ異なる強みと弱点がある。このセクションでは、建築パースの品質、制作環境のコスト、グラフィックボードの性能、拡張性、使いやすさ、そしてCPUの性能について比較をしていく。

3-1. 建築パース・CGパースの品質

インテリアCGパース 

建築パース・CGパースの品質において、MacとWindowsの最も顕著な差は、3dsMaxによるアウトプットが可能か否かである。3dsMaxは建築CG制作における業界標準とされ、その高度なモデリング機能、テクスチャリング、レンダリング能力は、他の多くのソフトウェアと比較してもトップクラスである。

弊社のCG制作もこの3dsMaxを利用して行われている。ぜひ制作例を見ていただき、3dsMaxによるアウトプットの質の高さを確認してほしい。
>>>株式会社モデルノ コーポレートサイト

Windowsの利点
3dsMaxはWindows専用ソフトウェアであり、この強力なツールを使用できる点がWindowsで建築CGパースを制作する大きなメリットである。3ds Maxによるビジュアライゼーションは、リアルな光の表現、精細なマテリアルの扱い、そして高度なシミュレーション機能により、最終的なパースの品質を大きく向上させる。建築CGのプロフェッショナルにとって、このソフトウェアはプレゼンテーションやクライアント提案の質を決定づける重要な要素となる。

Macの限界
Macユーザーは3ds Maxを利用することができない。これはMac環境での建築CGパース制作において大きなデメリットだ。MacでもCinema 4DやBlenderといった強力な3Dソフトウェアを利用できるが、3ds Maxに匹敵するほどの建築ビジュアライゼーションを制作することは難しい。

3-2. 制作環境のコスト

コスト

制作環境のコストは、建築パース・CGパースを制作する際に重要な要素の一つであり、選択するプラットフォームによって大きく異なる。WindowsとMacでは、初期コストおよび全体的なコストパフォーマンスに顕著な違いが存在する。

Windowsのコスト効率
Windowsマシンは、HP、Dell、Lenovoなど、多くの異なるメーカーから幅広い価格帯で提供されている。そのため、ユーザーは自分の予算に応じて、必要なスペックを備えたシステムを選択しやすくなる。また、パーツのアップグレードが比較的容易であるため、将来的により高い性能が必要になった場合でも、新たなマシンを購入する代わりに部分的なアップグレードが可能である。これにより、長期にわたるトータルコストを抑えることができる。

Macの初期投資とアップグレード制限
Appleコンピュータはそのデザインと性能で知られているが、比較的高価であり、モデルによってはカスタマイズやアップグレードが非常に制限されている。例えば、最新のMacBookやiMacはRAMやストレージが本体に直接組み込まれており、後からのアップグレードが不可能である場合が多い。これはユーザーが将来的にシステムをアップグレードする際に新しいマシンを購入する必要があるため、長期的にみるとコストバランスは悪いと言える。

3-3. グラフィックボード

グラフィックボード

グラフィックボードは、建築パース・CGパース制作におけるビジュアライゼーションの品質とパフォーマンスに直接的な影響を与える重要なコンポーネントだ。WindowsとMacのシステムで利用可能なグラフィックボードの性能と価格を比較すると、各プラットフォームの強みと制限が明確になる。

Windowsのグラフィックボードは多様
WindowsはNVIDIAやAMDなど、多くのメーカーから発売されている最新のグラフィックカードをサポートしており、これにより非常に高いレベルのビジュアライゼーションが可能となる。これらのグラフィックカードは、リアルタイムレンダリングを要求する建築ビジュアライゼーションの作業に最適で、ユーザーはプロジェクトのニーズに合わせて最適なスペックを選択できる。また、市場競争により価格も比較的リーズナブルであり、アップグレードを比較的簡単に行うことができる。

Macのグラフィックオプションの制約
Macは最近、自社開発のApple Siliconチップへの移行を進めており、このチップはシステムの統合性と効率を向上させるが、同時にいくつかの制約も生じている。その一つが、外部グラフィックカードの選択肢が限られ、グラフィック処理が内蔵のチップに依存するようになったことだろう。
また、建築ビジュアライゼーションの制作現場で要求されるNVIDIA製グラフィックボードが利用できないため、リアルタイムレンダリングやGPUレンダリングなどの恩恵を最大限活用できないのは、作業効率や制作品質にとってデメリットである。

3-4. 拡張性

拡張性

技術の進化は速く、プロジェクトの要求レベルも時間とともに変わるため、システムを柔軟にアップグレードできるかどうかが、投資としての価値を大きく左右する。

Windowsマシンの拡張性
Windowsマシンは一般的に非常に拡張性が高い。追加のストレージやメモリを簡単にインストールでき、必要に応じてより高性能なグラフィックカードや新しいマザーボードに交換することが可能だ。特にレンダリングやシミュレーションなど、リソースを多く要する建築CGパース制作において大きな利点となる。将来的に技術が進化した際にも、新しいマシンを購入しなくても、必要なパーツだけをアップグレードできるため、コスト効率よく最新の技術を利用し続けることができる。

Macの拡張性の制限
対照的に、Macシステムは拡張性において制限がある。特に最近のモデルでは、RAMやSSDなどの内部コンポーネントが本体に固定されており、ユーザーが後からこれらの部品をアップグレードすることはほとんど不可能だ。これはMacが提供するシームレスなデザインと高いビルド品質の一環として設計されているが、技術が進化するにつれてシステムの性能が不十分になった場合、ユーザーは新しいマシンを購入する必要が出てくる。これは特にコスト面での負担が大きく、長期的な運用において不利になり得る。

3-5. CPU

CPU

CPUの性能は、建築パース・CGパース制作において重要な役割を果たし、最新のプロセッサが導入されるたびにMacとWindows間での性能比較が注目される。

Apple Siliconの導入
Appleは、従来のIntelベースのプロセッサから移行を始め、独自のApple Silicon(Mシリーズチップ)を導入した。これらのチップは、アーキテクチャの最適化により高いエネルギー効率と優れたパフォーマンスを提供することで知られている。例えば、Apple M3チップは、前世代のM1やM2と比較してさらに処理速度とパワー効率が向上しており、特にマルチスレッド処理やグラフィックス性能が大幅に改善されている。

Windowsマシン用CPU
Windowsプラットフォームでは、IntelやAMDといったメーカーからのCPUが利用されている。これらのプロセッサは、特に高いカスタマイズ性と拡張性を持ち、多様なニーズに対応可能である。例えば、AMDのRyzenシリーズやIntelのCoreシリーズは、高いマルチコア性能を活かした複雑な計算処理や重たいグラフィック作業に適しており、建築CGパース制作においてもその力を発揮する。

CPU性能の詳細な比較には、ベンチマークサイトであるCPU-Monkeyが有用である。このサイトでは、Apple MシリーズとIntelやAMDのCPUのベンチマークを比較してくれている。

4. 建築パース・CGパース制作用PCで構成「コスト」比較 Mac vs Win

この章では、建築パースを制作するにあたり、この程度は必要と思うマシン環境を基準に、Mac・Windows両者の性能・コスト面の比較を行っていく。実際にどのくらい両者にはコストの差が発生するのか見てみよう。(記事執筆時2024年5月時点の情報)

その基準となるマシン構成はこちらである。CPUの数値はCinebench23によるベンチマークによるもの。

メインPC・1台レンダースレーブ用PC・2台
CPUシングル・17,000/マルチ・30,000程度マルチ・15,000程度
GPURTX 4060 Ti必要なし
メモリ64GB16GB
SSD2TB512MB

メインマシンで通常作業を行うため、シングルプロセッサのベンチマークは17,000程度、マルチで30,000前後は欲しい。そしていざレンダリングを行う際は、ディストリビュートレンダリングが必須なので、レンダリング用に2台程度専用のPCが必要と設定。計3台のマシン構成である。

4-1. Apple製品で構成する場合

メインマシンの要求スペックを満たす製品は、「Mac Studio」24コアCPU、60コアGPU、32コアNeural Engine搭載Apple M2 Ultraになる。ベンチマーク・その他は以下になる。

CPU(Cinebench R23)GPU(OpenCL)メモリ
Mac Studioシングル・1,695/マルチ・28,570131,10064GB

GPUのベンチマークは見つからなかったので、こちらのサイトを参考にさせてもらった。
https://appletosugosu.com/m2ultra-nvidiartx4060-hikaku
記事によると、M2 Ultraのベンチマークは「NVIDIA RTX 4060 Ti(133,800/OpenCL)」とほぼ同じということで、比較対象となるWin機は同等のものを設定する。
ストレージを2TBに増やして、こちらの価格は 658,800円(税込)となる。

次にレンダリング用のスレーブ機。現在の製品ラインナップの中ではMacminiしか選択肢はないだろう。

CPU(Cinebench R23)GPU(必要なし)メモリ
Mac mini(M2 Pro 10コア)12,12516GB

CPUベンチは物足りなく、GPUも不要なので若干勿体ないが、他に選択肢がない。こちらの価格が184,800円(税込)

4-2. Win機で構成する場合

Win機の場合を見てみよう。今回はカスタマイズ性の高いBTOパソコンにて検証してみる。まずはメインマシンを、MacStudioのGPUと同等の「NVIDIA RTX 4060 Ti」搭載のもので探してみた。

Mouseコンピューターより

マウスコンピューター


https://www.mouse-jp.co.jp/store/g/gdaiv-fxi7g6tb7adcw102dec/

CPU(Cinebench R23)GPU(NVIDIA RTX 4060 Ti)メモリ
DAIV FX-I7G6TCore™ i7-14700F (シングル・2,228/マルチ・33,572)133,80064GB

若干CPUの性能が、基準よりもよいものではあるが、Windoes11Pro+ストレージ2TBで価格 340,200円(税込)

続いてレンダリング用のスレーブ機は
パソコンショップSEVENから

パソコンショップSEVEN


https://pc-seven.co.jp/bto/22972.html

CPU(Cinebench R23)GPU(必要なし)メモリ
SEVENAMD Ryzen™ 5 7600 (マルチ・14540)16GB

こちらは想定しているようなスペック機が見つかった。価格は13,6460円(税込)である。

4-3. コスト比較

以上の内容をコスト面で比較し、まとめたものが以下になる。

MacWin
メインマシン(1台)658,800円340,200円
レンダリング用(2台)369,600円(@184,800円)272,920円(@13,6460円)
合計1,028,400円(税込)613,120円(税込)

基準となるマシン構成を満たそうとすると、Macの方がWin機よりも40万円ほど高くなってしまう結果となった。当然今回は、CPUをメインとした比較検討であって、その他の要素を含めた総合的な判断は必要となるため、この内容はあくまでも参考程度に捉えていただきたい。

製品発表のタイミングもあり、現行製品のラインナップでは若干Macには不利な条件だったかもしれない。しかしながら、Macは高額だといわれる理由がおわかりいただけただろう。

5. mac歴20年以上、Win移行5年が経った筆者の抱く両者の違い

偏見

筆者はPerformaシリーズからAppleを使い始め、20年以上MacOSだけを愛用してきた。しかし、Apple製品のみでの3DCGに限界を感じ、約5年前にWindowsへ完全移行を行った。MacOSから離れ、Windows歴は数年ではあるが、両環境を知った今、双方のメリットデメリットを偏見交えて紹介していこうと思う。

5-1. OSの違い

OSの使いやすさを考えると、MacOSの方が優れているという印象である。

MacOSは、ユーザーのニーズを丁寧に捉えており、利便性を重視した機能を標準で装備している。この標準でというところが大きい。一方Windowsは、見た目の美しさは以前に比べ向上しているのだが、わかりずらくとっつきにくさを感じる。

そして、Windowsへの移行を行い、慣れていく過程で苦戦したのは、バックアップ機能の構築である。MacOSに標準装備されているタイムマシンに慣れていたため、同様の機能をWindowsで簡単に設定できないことに戸惑った。

また、ファイルの検索機能や、表示方法はMacは感覚的に行えて非常にわかりやすい。

Windows標準に足りない機能を解決するためにフリーソフトを導入するのだが、不具合が発生したり、導入方法の把握などが必要で、初心者には容易ではないだろう。

まとめると、MacOSは使い勝手が良く、作業効率を向上させることができる一方、Windowsはカスタマイズや選択の自由度が高いが、それにはユーザーに多くの技術的な知識が必要となってくる。

5-2. コストの違い

長年Macを使用してきた私がWindowsに移行した大きな理由の一つは、コストの問題である。Macはデザインと使い勝手の良さで知られているが、価格は高く、カスタマイズの選択肢も限られている。特にプロフェッショナル用途で使う際には、これが大きな問題となる。

製品ラインナップも入門、一般、プロ用と分かれており、必要とするスペックのマシンを用意しようとすると、当然コストが高くなる。さらに購入後のアップグレードがほとんど不可能であるため、新しいニーズが出てきた場合は新たなマシンの購入が必要となる。

一方、Windowsに移行して感じたのは、そのコストパフォーマンスの高さである。Windowsマシンは様々なメーカーから多様なスペックの製品が提供されており、自分のニーズに合ったものを選ぶことができる。また、必要に応じて高性能なグラフィックカードや追加のメモリを比較的安価に追加できるため、プロジェクトの要求に応じてシステムをカスタマイズできるのは大変ありがたい。

こちらはWindowsが優勢である。

5-3. デザインの違い

20年以上Macを使い続けてきた私は、Apple製品の洗練されたデザインに魅了されてきた。

その製品デザインはミニマリズムを核としており、使い勝手の良さだけでなく視覚的な美しさでもユーザーを引きつける。特に一つのブランドで製品を統一することで、作業環境全体に一貫性と統一感をもたらすことができ、デザインスタジオのような空間を演出することができるのは大きな魅力だ。

一方、Windowsは、様々なメーカーからPCやモニターが提供されており、形、色、素材が各々異なるため、自分の好みや用途に応じて選択が可能だ。しかし、この選択肢の多さは、時として統一感を損なう大きな要因となる。各デバイスが異なるデザインコンセプトを持っているため、一つの空間に複数の製品を組み合わせた場合、Apple製品のような洗練された統一感を出すことは難しい。

美しさを重視し、空間の一貫性を求める場合は、Appleの製品が非常に魅力的である。私自身は、Windowsに移行した今でも、Apple製品のデザインの美しさは何物にも代えがたい価値があると感じている。

5-4. 出来ることの違い

Windowsではほとんど制限なく、幅広いアプリケーションが利用できる。これには3DCG制作ソフト、高度なビデオ編集ツール、そして様々な開発ツールがあたる。Windowsマシンはハードウェアの拡張性に優れており、プロジェクトに必要なスペックに応じてグラフィックカードやプロセッサをカスタマイズすることが可能だ。それによって、技術的な要求が高いソフトウェアや、リソースを大量に消費するアプリケーションでもスムーズに動かすことができるのは強みである。

Macにはソフトウェアの互換性やハードウェアの拡張性に制限がある。多くのプロフェッショナル向けアプリケーションはMacでも利用できるが、一部の専門的なソフトウェアではWindows専用となっていることも少なくない。また、グラフィックボードなどのアップグレードが困難であるため、最新の技術を利用することが制限される場合がある。

以上が私が考えるMacとWindowsの違いだ。
3DCGで建築パースを制作するという目的に限ったものではあるが、5年も経っているので、追い求めていたApple製品のデザイン性を補えるほど、今ではWindowsの使用メリットを感じている。

以前は、最終的なアウトプットよりも、Macを使っているというブランドイメージを重視していた。
しかし制作の過程やイメージよりも、より良いアウトプットを創造することが重要であり、そのための最適な選択をすることが最も大切だと今では考えている。

6.よくある質問

なぜ多くのプロが建築パース制作にWinを選ぶのでしょうか?

Windowsはソフトウェアの互換性とハードウェアの拡張性が高く、高度な3Dモデリングやレンダリングに必要なグラフィックカードをサポートしているためです。また、Windows環境は多くの専門的なCADおよび3DCGソフトウェアが利用できるため、プロフェッショナルな建築パース制作の現場では重宝されるのが理由です。

Macを使用する場合の主なメリットは何ですか?

Macの主なメリットは、その直感的なユーザーインターフェースと高いシステム安定性です。また、Appleのエコシステムとのシームレスな連携は、他のAppleデバイスとの間での作業の効率を高めます。デザイン作業やビデオ編集などのクリエイティブなタスクでは、Macは高い評価を受けています。

グラフィックカードの選択がパースの品質にどのように影響しますか?

高性能なグラフィックカードは、複雑なシェーダーやテクスチャを処理ができ、リアルタイムレンダリングに大きな影響を与えます。また、CPUを使用しないGPUレンダリングの利用も広まりつつあるので、高度な処理を素早く行えるグラフィックカードの選択は必須です。

私は初心者ですが、どのOSを選ぶべきですか?

初心者の方には、使用目的と予算を考慮した上で、選択することをお勧めします。まずは使用目的を明確にしておきましょう。一般的に、Macは使いやすさと安定性で初心者に優しいとされますが、Windowsはソフトウェアの選択肢が広く、コストパフォーマンスが良いため、多様な用途に適しています。将来的なことを考えるとWindowの選択がよいと考えます。

建築パース制作におけるCPUの選び方を教えてください。

建築パース制作には高いマルチコアパフォーマンスが求められるため、コア数が多く、スレッド処理能力の高いCPUを選ぶことが重要です。IntelのCore i7やi9、AMDのRyzen 7やRyzen 9などが適しています。

MacとWin、どちらのプラットフォームの方がコストパフォーマンスが良いですか?

一般的に、Windowsはコストパフォーマンスに優れています。多様なハードウェア選択肢と比較的低価格でのカスタマイズオプションがあり、同等の性能を持つMacに比べて価格が低い傾向にあります。また、拡張性も高いため、将来的に必要に応じてアップグレードが容易です。

7. まとめ

以上が、建築パース・CGパース制作に最適なのはWinとMacどちらなのかについての解説である。

大きな理由がない限り、Windowを選ぶべきであることは、コストの面でも環境の面でも明らかになったのではないだろうか。

私も長年、Apple製品で統一することで作り上げられる空間に惹かれ、そのデザイン性を信仰していた。それゆえ、Macを使っているというブランドイメージに固執する気持ちがよくわかる。記事内で紹介した、Windowsマシンとの価格差を受け入れ、最高品質のアウトプットまで必要なければ、Macという選択も間違いではないだろう。

結論として、
最高品質の建築CG制作が目的の場合は、3dsMaxの利用できるWindows、
高品質程度のCGで十分の場合は、Macも選択肢として考えられる といったところか。


この記事では、現段階で感じている両プラットフォームの印象と情報をフラットにまとめている。
MacかWindowsか迷っている場合は、ぜひ参考にしてほしい。

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