建築パース依頼時に直面する「修正」と「変更」の違いを詳しく解説

建築パースの制作とは、自身が思い描く理想のビジョンを視覚化することである。そしてその過程には避けて通れない「修正」と「変更」のステップが存在する。

では、この「修正」と「変更」にはどのような特徴があって、どう異なるというのだろうか。そしてそれはプロジェクトにどのような影響を及ぼすのか。

本記事では修正と変更の定義から、制作スケジュールに与える影響、そしてよくある具体例を通して、建築パース制作の過程で多くの人が直面する疑問に答えていきたいと思う。

目次

1. 建築パース制作における修正と変更の違い

建築パース制作における修正と変更の違い

建築パース制作の過程において、修正と変更の違いを把握することは、プロジェクトを滞りなく進行する上で欠かせない。それぞれの定義を今一度確認しておこう。

1-1. 修正とは

修正とは、小さな調整や精度の向上を目的とした作業のことを指す。
例えば、色の調整や、照明の強度変更、小さなオブジェクトの位置調整など、プロジェクトの基本やコンセプトを変えることなく、制作中の建築パースを改善する行為である。

1-2. 変更とは

一方、変更は修正よりもはるかに大きな範囲を含み、デザインの見直しや、新しい要素の追加を伴う場合を指す。たとえば、建物の形状の変更、全く新しいマテリアルの使用、または新たな視点からのパース作成などが含まれる。

変更はしばしば、プロジェクトの根本的な方向性を変える可能性があり、そのためには追加の時間やリソースが必要とされるのが一般的である。

2. 修正・変更が及ぼす影響

修正・変更が及ぼす影響

プロジェクト中に生じる修正や変更は避けがたいもの。しかし、これらの変更がプロジェクトに及ぼす影響には、しっかりとした理解が必要である。この章では、修正や変更が具体的にどのような影響を及ぼすかを解説していく。

2-1. スケジュールが伸びてしまう

変更や修正が発生する場合、懸念事項の一つがスケジュールへの影響である。

特に、大幅な変更は予定されていた納期から大きくづれる可能性がある。修正作業もささいなものであればすぐに対応可能だが、多くの細部にわたる修正はそれなりの時間が必要となってくる。

制作開始前は、修正や変更の影響を想定していない場合が多いので、事前にそれにかかる時間を見込んで計画を立てることも重要である。

2-2. 制作費用が追加になってしまう 

度重なる修正や、大幅な変更が発生すると、その対応に費用を要する場合がある。見積りはある程度の修正や多少の変更は見込んでいることがほとんどであるが、想定を超えた内容になると、余計に時間や手間がかかってしまいその分のコストが追加で必要となる。

3. 追加費用が発生するパターン3選

追加費用が発生するパターン3選

ここでは、特に追加費用が発生しやすい変更のパターンを3つを紹介していく。

3-1. 大幅な形状変更

プロジェクト進行中に、デザインや建物形状の大幅な変更が生じる場合がある。このパターンが最も費用増加のリスクが高い。元々の計画との違いが大きく、新たな作業と時間が必要になるためである。

3-2. 大幅なマテリアル変更

マテリアルの変更も同様に追加費用が発生するパターンである。新たな素材のテクスチャー・マテリアル作成・調整作業は、繊細で時間を要するものである。

異なる素材感を比較し、最終的なデザイン決定に役立てたいと考えていることが多いが、それぞれのパース制作にはそれだけのリソースが必要となる。あらかじめその旨を伝えておくか、予算を設けてマテリアル違いのパターンパースを制作するのがよいだろう。

3-3. 決定後のアングル変更

決定したアングルが、作業の行程中に変更になる場合も追加費用が発生する場合が多い。視点が変わると見え方が全くかわるため、新たなアングルに合わせた調整が必要となる。こちらは費用だけでなく、必要な対応時間も大幅に増加する可能性が高い。

4. よくある修正・変更のパターン13選

この章では、修正と変更の違いを具体的な事例を用いて解説していく。対応に要する作業のボリューム度合いや、修正として捉えられる範囲か、変更なのかの線引きも併せて示していく。

□ ここをもう少し明るくしたい 対応難易度:★☆☆☆☆ 必要時間:★☆☆☆☆

建築パースのここをもう少し明るくしたい 対応難易度:★☆☆☆☆ 必要時間:★☆☆☆☆
明るさの気になる箇所、イメージと異なるところを伝えれば、希望通りになるまで調整可能である

□ ここの色をもっと濃くしたい 対応難易度:★☆☆☆☆ 必要時間:★☆☆☆☆

建築パースのここの色をもっと濃くしたい 対応難易度:★☆☆☆☆ 必要時間:★☆☆☆☆
明るさ同様、色味も調整は比較的容易に可能

□ もう少し全体を明るくしたい 対応難易度:★☆☆☆☆ 必要時間:★☆☆☆☆

外観パースをもう少し全体を明るくしたい 対応難易度:★☆☆☆☆ 必要時間:★☆☆☆☆
画像全体に対しての調整は簡単に対応できる場合が多い

□ もっとコントラストを高めたい 対応難易度:★★☆☆☆ 必要時間:★☆☆☆☆

もっとコントラストを高めたい 対応難易度:★★☆☆☆ 必要時間:★☆☆☆☆
コントランスとの調整も同様。内容によっては再度レンダリングが必要となるので場合もよる

□ ~を削除したい 対応難易度:★☆☆☆☆ 必要時間:★☆☆☆

CGパースの~を削除したい 対応難易度:★☆☆☆☆ 必要時間:★★☆☆☆

□ 人を配置したい 対応難易度:★★☆☆☆ 必要時間:★☆☆☆☆

CGパースに人を配置したい 対応難易度:★★☆☆☆ 必要時間:★☆☆☆☆
人を配置するとスケール感やリアリティが増す場合がある

□ ここにグリーンを入れたい 対応難易度:★★☆☆☆ 必要時間:★★☆☆☆

CGパースにグリーンを入れたい 対応難易度:★★☆☆☆ 必要時間:★★☆☆☆
なにか物足りないと感じる場合は、緑を配置するケースが多い

——————–↑修正として対応可能範囲↑——————–

ここまでの内容であれば、修正の範囲内であり、対応に要する時間はそこまでかからない。以下で紹介するパターンは、その内容やボリュームによって追加費用が発生してしまうパターンだ。

▣ 仕上げ材を変更したい 対応難易度:★★★☆☆ 必要時間:★★★☆☆

CGパースの仕上げ材を変更したい 対応難易度:★★★☆☆ 必要時間:★★★☆☆
ボリュームによっては、マテリアル違いのパターン制作同等の対応量になるため、費用が追加になるケースが多い

▣ 一部デザインを変更したい 対応難易度:★★★☆☆ 必要時間:★★★

CGパースの一部デザインを変更したい 対応難易度:★★★☆☆ 必要時間:★★★★☆
こちらも内容によってはデザインパターン違いパース制作同等の対応になるため、費用が追加になるケースが多い

▣ 家具を変えたい 対応難易度:★★★☆☆ 必要時間:★★★★☆

 CGパースの家具を変えたい 対応難易度:★★★☆☆ 必要時間:★★★★☆
一か所程度の変更であれば問題ないが、3割以上に及ぶ変更は追加費用が発生する可能性が高い

——————–↑変更としてボリュームによって追加費用が発生する内容↑——————–

このあたりの内容が追加発生してしまう可能性の高い内容である。また、ある程度の対応する時間が必要だということも理解しておきたい。


■ アングルを変更したい 対応難易度:★★★☆☆ 必要時間:★★★★★

建築パースのアングルを変更したい 対応難易度:★★★☆☆ 必要時間:★★★★★
決定後のアングル変更は費用が追加になると考えた方がよいので、決定は慎重に行おう

■ 昼間を夕景にしたい 対応難易度:★★★★☆ 必要時間:★★★★☆

建築パースの昼間を夕景にしたい 対応難易度:★★★★☆ 必要時間:★★★★☆
時間帯の異なるシーン制作は追加の費用が必要である


■ クライアントに見せたら変更を求められた 対応難易度:★★★☆☆ 必要時間:★★★★☆

納品後の修正・変更対応は、基本的に追加の費用が発生してしまうと思ったほうがよい。軽微なものについては、好意で対応してもらえる場合があるので相談してみよう。


——————–↑変更として追加費用が発生する内容↑——————–

ここまでの内容となると、追加の費用が発生する。制作会社は修正・変更の時間を見込んでスケジュールをたてているが、このあたりのボリュームとなると想定していない。その為、事前にアングル違いのパターンや夕景の制作が必要なことを伝えておかないと、計画していた納期に間に合わなくなるので注意が必要だ。

5. 制作者の技術を引き出せる!よい指示とダメな指示

制作者の技術を引き出せる!よい指示とダメな指示

建築設計、デザイン、CG業界では、プロジェクトの中で修正や変更指示がしばしば発生する。伝わる修正・変更指示は、作業の効率化だけでなく、クリエイティブな仕事の質を向上させる上で重要である。この章では、質の高い指示方法について解説していく。

5-1. 目的を伝える(どうしたいのか)

指示を出す際に最も大切なのは、達成したい目標や結果を明確にすることである。

目的が明確であれば、受け取る側はどのような結果が期待されているのかを正確に理解でき、それに向かって具体的な行動を取ることができる。

例えば、CGパースの修正依頼の場合、「もっとリアルに見せたい」という目的だとしたら、受け手は照明の効果を強化する、質感をより詳細に表現するなど、リアリティを高めるための具体的な施策を考えることができる。

このように、目的を伝えることは、その後の対応を効率的かつ効果的に行うことができる。逆に、この一言がない場合は、とりあえず指示に従っておけばいいかと考えられてしまい、本質までたどり着かないといった結果になってしまうので注意が必要である。

5-2. 理由を伝える(なぜそうしたいか)

変更を依頼する際には、単に何をしたいのかを伝えるだけでは不十分である。なぜその変更や修正が必要なのか、その背後にある「理由」を添えることが非常に重要である。

理由を伝えることで、受け手は指示の意図を理解でき、同じ視点を持ってその課題に対峙できるようになる。
例えば、CGパースの色見を変更する場合、「クライアントがより温かみのある雰囲気を望んでいるから」という理由を伝えることで、単に色を変えるだけでなく、クライアントの求める温かみに合わせた色合いや光の使い方を検討することができる。

このように、なぜそうしたいかという理由を添えれば、受け手がより目的に沿った修正対応を行うことが出来るのである。そして最終的に、プロジェクトの目標やクライアントの期待に応えられるようなCGパースを制作することができる。

5-3. その上で感じたことを伝える

修正や変更を依頼する際、目的と理由を明確に伝えた上で、自分がどのように感じているかを伝えることも重要である。

なにが良くてなにがダメなのか、その基準をキャッチすることはなかなか難しく、修正対応の過程で悩むことは多い。そんな時に、「この色合いや明るさはとてもよいのだけど、この部分はもう少し調整してほしい」など、感覚的な基準を伝えてもらえると対応はスムーズに行え、相違も少なくなるはずだ。

現在は文字ベースでの言葉のやりとりが中心なので、このようなちょっとした一言をつけ添えることがとても重要である。ささいなことではあるが、とても重要なので是非実践してみてほしい。

6. まとめ

建築パース依頼時に直面する「修正」と「変更」は、混同されがちな概念だが、本記事を通じてその違いが明確になったはずだ。

修正は多くの場合、細かな調整や微調整を指し、比較的容易に対応可能で、影響範囲も限定的。一方変更は、より大幅なデザイン・マテリアルの変化、アングルの修正などを含み、これらは作業量・スケジュール・費用に大きな影響を及ぼす。

建築パース制作時に、修正や変更は必ずと言っていいほど発生する。頭の中のイメージは、いざかたちにしてみると、想像していたものと異なる場合は非常に多い。希望通りの建築パースを制作するには、修正や変更を無くそうとするのではなく、その対応を真摯に行ってくれる制作会社を選定することだろう。

本記事が、そのような制作会社との、より良いコミュニケーションと結果につながる一助となれば幸いである。

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