建築パース・CGパース制作【中級者】からスキルアップするテクニック10選

建築パース・CGパースの制作を続けていく中で、誰しもが「もっとクオリティを上げたい」「よりリアルな表現に挑戦したい」と考えることがあるだろう。特に、基本的な技術を習得した後の中級レベルに達すると、さらなるステップアップを求め、より高度な表現を追求したくなるものだ。

初めて建築パースを学ぶ段階では、「とりあえず」制作できるようになるための情報や書籍は多くなっている。しかし、より高度な技術やリアルさを求めたときに、参考にできる情報や書籍は驚くほど限られている。

そこで今回は、中級者向けにCGパースのクオリティをさらに引き上げるための10のポイントを紹介する。これらは、実践的でありながら、書籍やWebではなかなか得られないノウハウだ。

これらのポイントは、弊社で日々の建築パース制作に取り入れている基本的な技術と考え方に基づいており、すぐにでも制作に応用できるものだ。ぜひ参考にして、さらに一歩進んだCGパースを目指してほしい。


今回は一定のレベルで建築パース・CGパースが制作できる方に向けた記事となっている。
これから始めたい、多少は制作できるといった方には、初心者に向けた記事がある。下記リンクから確認してほしい。
>>>関連記事 建築パース・CGパース初心者からスキルアップするためのポイント10選 

目次

1. 多くのリファレンス資料を用意する

初心者向けの記事でも触れたが、このポイントは初級者だけでなく、中級者にも改めて重要なことなので再度とりあげる。

建築パース・CGパースを制作する際、まず最初に、制作するシーンの理想となるイメージ画像をリファレンスとして集めることから始めよう。ただし、可能であればCGではなく、実際に撮影された現実の写真を選ぶことを勧める。なぜなら、AI生成画像や他のCG作品はしばしばデフォルメされ、現実の精緻さを完全には表現していない場合が多いからだ。

例えば
木々に囲まれた邸宅の外観パース制作を行う際は、その土地の自然の様子が把握できる画像や、周辺住宅の画像を集め、光の当たり方・影の落とし方・マテリアルの表現方法・その場の空気感までも表現できるよう参考にして制作に取り組むとよい。

このCGパースは右にあげた画像をリファレンス利用して制作されている
上段(既存CGパース):アングル・構図を参照
中段 : 構図・明暗表現を参照
下段:下草表現・種類を参照 

特に、光の入り方やマテリアルの質感といった要素は、現実の写真を参考にすることで、CGパースのクオリティが飛躍的に向上する。現実に近づけるという姿勢で制作に取り組むことが、中級者としてのスキルを一段と高めるカギだ。

また、構図や見せ方を参考にするといった点では、他社制作のCG作品も参考になる。

まずは、以下のようなサイトでリファレンスとなる写真を集めてみよう。安易に妥協せず、可能な限り現実の写真に近づけることを目指して制作を進めると、より高いクオリティが実現できるだろう。

リファレンスが揃ったら、そのクオリティを目標にしながら制作に取り組んでいこう。

2. 出来る限りディテールの作り込みを行う

建築パースやCGパースで「何か物足りない」「いまいちだな」と感じる理由の一つに、ディテールの表現不足が挙げられるだろう。

外観パースでは周辺の環境の作りこみ具合でだいぶ印象は変わる。

CGパースのクオリティは、どれだけ細部まで作り込まれているかで大きく変わる。細かく再現されたディテールは、見る人に実物と錯覚させるほどのリアルさを与え、全体の質を格段に高めてくれるからだ。

この効果が特に現れるのは、CGパースを拡大表示したときである。スマートフォンなどで確認していた小さな画像を、PCの大画面で見ると印象が全く異なるという経験はないだろうか?同様に、建築パースやCGパースでも、細部が作り込まれていないと、拡大表示した際に魅力が失われてしまうことが多い。

建築パースやCGパースは、スマホの小さな画面で見るだけではなく、大きなサイズで表示される場面が多い。そのため、どんなサイズで見られても耐えられるように、細部までしっかりと作り込むことが重要だ。

ディテールを精密に表現するためには、CG技術に加えて、建築やインテリアに関する知識も欠かせない。こうした知識を深めていくことで、より質の高い作品を生み出すことができるだろう。

3. 面取りを行う

これは前章のディテールの作り込みにも関係するが、制作するオブジェクトには面取りを行うことが大切である。

特にカメラに近い位置に配置されたり、大きく描写されるものには面取りが必須だ。現実世界では、CGで作成されるプリミティブのようなピン角と呼ばれる角が鋭いオブジェクトはほとんど存在しない。多くの物体は、面取りされていたり、丸みを帯びていることが一般的だ。CGが不自然に見えてしまう原因の一つは、この面取りが施されていないことにある。

では実際に何ミリの面取りが必要なのか疑問に思うことだろう。CGの制作では、面取り寸法と分割数で設定されるが、建築CGで利用される面取り寸法は1~3mm程度、分割数は0~5の範囲である。

右画像は地袋部にR面取り(1.5mm : 分割数3)を施している。ハイライトが発生しているのがわかるだろう。

ただし、面取りを行うとポリゴン数が増え、操作やレンダリング時間に影響が出ることがある。そのため、カメラから遠くに配置されるオブジェクトについては、面取りを省略しても問題ないことも覚えておこう。やみくもに面取りを行うわけでなく、状況に応じて必要な箇所にのみ面取りを施すよう心がけるとよい。

4. 意図的に隙間を設け、陰影を発生させる

オブジェクトを床やテーブルに置くとき、ピッタリと隙間なく配置していないだろうか。もちろんそれで問題はないのだが、その際にほんの少し隙間を設け、意図的に陰影を発生させてみよう。そうするとオブジェクト間に境界が表れてよりリアリティのある表現が可能になる。

例えば現実世界で、家具を配置するときにアジャスターで高さを調整することがある。このように床と家具の間にわずかな隙間ができると、境界が浮かび上がり、その家具が際立って見えるのだ。このテクニックは家具だけでなく、テーブルの上に置いた小物類にも有効であり、全体のビジュアルに深みを持たせることができるのでお勧めである。

左画像は天板と小物をぴったりと配置した例。右画像はそこに隙間を設けた例。

また、目地の表現も同様にクオリティアップに欠かせない要素だ。図面上では単純な線で描かれている建具や接合部分も、実際には隙間がある。これらの目地や微妙な隙間を再現することで、CGがより現実に近いものとなり、精密さが増す。特に、壁や床、窓枠などの接合部分に目地を取り入れると、CGパース全体がよりプロフェッショナルな仕上がりとなる。

扉枠と本体の間、巾木と床材との間にそれぞれ隙間を設けた例

隙間と目地を意識することで、オブジェクトの存在感を際立たせ、CGパースの完成度を一段と向上させることができる。

5. カメラ外のオブジェクト配置で表現の幅をひろげる

建築パース・CGパースを制作する際、カメラが映し出す範囲内だけに注力していないだろうか。実は、カメラに映らない部分にもオブジェクトを配置することで、シーン全体の雰囲気を大きく改善でき、空間が物足りないと感じる場合に特定の効果を引き出すことができる。

この手法は、写真撮影時に使うレフ板をイメージするとわかりやすい。光の反射を利用して被写体をより美しく見せるのと同じように、カメラ外のオブジェクトがシーン全体に間接的な影響を与え、より深みのある表現が可能になる。

具体的な方法を3つほど紹介していこう。

5-1. 陰影を高める方法

窓からの環境光に照らされるインテリアシーンにおいて、陰影効果をより高める方法を紹介する。

右側の窓から光が入るシンプルなインテリアシーンを例に解説しよう。

  • まず、インテリアの床面より少し下に平面ポリゴンを配置し、このオブジェクトに黒や白のマテリアルを適用する。黒くするほど天井面が暗くなり、白くすれば明るくなるため、陰影をコントロールすることができる。
  • 次に、インテリアシーンの外部に、2枚の立方体の壁を配置し、それぞれの高さや角度を調整して、室内に差し込む光をコントロールする。この時、外部に配置したオブジェクトはレンダリングや反射には表示されないよう設定することを忘れないように。
左画像:外部オブジェクト配置なし 右画像:床平面+壁BOX2枚配置

上の2つの画像を比較すると、陰影の効果が大きく異なることがわかる。オブジェクトの色を白から黒へと調整しながら、その影響をリアルタイムレンダリングで確認し、最適な効果を見つけていこう。

この方法を使うと、光と影のコントラストを強調でき、よりリアルで印象的なシーンを作り出すことができる。

5-2. 意図的に暗いゾーンを生み出す方法

次に紹介するのは、インテリアシーンの中に意図的に暗いゾーンを作り出す方法だ。単に明るいだけのインテリアは、どうしても単調な印象になりがちだが、適度な陰影を加えることで、空間に奥行きと深みを与えることができる。

今回は結果から確認してみよう。右側の画像が、この効果を反映させたレンダリングだ。赤矢印で示した部分には、左側の画像に比べて適度な暗いゾーンが発生しているのがわかるだろう。

この効果は、暗くしたい範囲に、黒色マテリアルを投影した平面オブジェクトを配置することで実現できる。ただし、意図しない場所も反映してしまう場合があるので、平面の大きさや場所を微調整しながら配置していく必要がある。

トンネル構図とよばれるこのシーンでは、両サイドに黒色マテリアルを投影した平面ポリゴンを配置して、適度な陰影とコントラストを加えている。

5-3. 室内に差し込む光をアレンジする方法

最後に紹介するのは、室内に差し込む光のかたちをアレンジする方法だ。これにより、シーンにより豊かな表現を加えることができる。

準備に必要な素材として、樹木の形を切り抜いたマスク画像(白黒の画像)を用意する。無料素材サイト「SOZAIYA」では、背景が切り抜かれた樹木のPNGファイルを提供しているので、これをPhotoshopなどの画像編集ソフトでマスク画像に加工しよう。

  • 制作したマスク画像をマテリアルの「Opacty(透明度)」の項目に設定し、平面ポリゴンに投影する。
  • その平面ポリゴンを窓の外に配置(上画像左参照)
  • 太陽を配置し、その平面ポリゴンを介して、室内に光が差し込むように調整

    樹木が落とす影が室内にも反映され、単調な光の表現にバリエーションを加えることができる。

6. アセットの配置を慎重に決める

家具や小物を配置する際には、ただ図面通りに置くだけでは不十分である。例えば、ペンダントライトの配線が奥にある吊戸棚と被ってしまう場合、そのままにしてしまっていないだろうか?図面上の指示だからといって、その位置を固定するのではなく、要素同士が重ならないように調整することが重要だ。(もちろんその旨はクラインアントに伝える必要はある)この対応を行えば、視覚的にクリアで、要素同士がつぶし合わないバランスの良い配置が実現できる。

左: 照明器具・水栓が背後にある収納扉目地やその他要素と被って配置 右 : それを解消した例

特に、カメラの構図が正面から捉えるシーンでは、中心線が発生する。このラインを意識してアセットを配置することで、全体のバランスが整い、見た目が大きく向上する。何も考えずにアセットを配置するのではなく、構図や要素の関係を慎重に検討しながら配置することで、よりプロフェッショナルな仕上がりを目指そう。

若干のズレでも手寧に調整・対応することで仕上がりに大きな違いが生まれる

アセットの配置ひとつでCGパースの印象が大きく変わることを忘れずに、細かい調整を怠らないことが肝心だ。

7. 品質 > レンダリング・対応時間を意識する

ディテールを作り込んだり、シーン全体にアセットを配置していると、「ここまでやるとレンダリング時間が大変なことになりそうだな……」と感じて、妥協してしまいたくなる瞬間があるかもしれない。しかし、その時に思い出してほしいのは、「時間を優先するあまり、品質を犠牲にしていないか?」ということだ。

確かに、複雑なディテールやアセットを追加すると作業に時間がかかるかもしれない。しかし、そのような状況でも品質を犠牲にするのではなく、作業効率を向上させて回避する方法がある。たとえば、ProxyやScatter機能を使えば、シーン全体を軽量化し、作業をスムーズに進めることができる。これらのツールは、シーンの管理・全体の作業効率を向上させ、作業の時間を短縮するのに役立つ。

選択を迫られたときには、作業時間の短縮を優先してディテールや手間を削るのではなく、様々な機能を活用して効率よく作業を進めながら、品質を高める方向を選ぼう。時間をかけてでも、完成度の高い作品を目指す姿勢が重要だ。

8. ランダマイズを利用する

CGパースを制作していると、広範囲にひとつのテクスチャを適用した際、タイリング(繰り返し)が目立ち、不自然に見えることがよくある。例えば、木のルーバーにテクスチャを適用したときに、全て同じ模様になってしまうのはよくある問題だ。これではリアルな表現からかけ離れてしまう。

しかし、最近ではこの問題を解決する方法がマテリアルの設定で可能になってきた。弊社で使用しているCorona Rendererでは、UVW Randomizerといった機能があり、これを使うことでテクスチャの繰り返しを抑え、自然な見た目を実現することができる。これらのランダマイズツールは、繰り返しパターンが目立たないようにするための必須テクニックだ。

CGパースで広範囲に同じテクスチャを使う場合には、これらのランダマイズ機能を積極的に活用し、リアルで自然な仕上がりを追求しよう。

9. 有料素材を利用する

限られた時間の中でCGパースを制作する際、テクスチャや家具、小物など、すべてを一から自分で用意するのは現実的ではない。そのため、配布されている素材を利用するのは一般的な手法だろう。特に無料の素材は、コストを抑えるために多くの人が活用しているだろうが、無料素材にはバリエーションやクオリティの面で限界があることを実感しているはずだ。

自身のCGパース制作を次のレベルに引き上げたいなら、有料素材の利用を検討すべきだ。有料サイトでは、無料素材では得られない高品質なテクスチャや家具、小物が多数揃っており、制作の効率化にも大きく貢献する。限られた時間の中で、より高品質な仕上がりを目指すなら、有料素材を活用することが賢明な選択だろう。

もちろん、必要な素材をすべて購入する必要はないが、重要な部分には投資を惜しまないことが、ワンランク上の作品を作り上げる上で重要である。

10. 出来る限り3Dモデルで完結させる (Photoshopに頼りすぎない)

以前の建築パース・CGパース制作は、3DCGで大まかな形を作り、最終的にPhotoshopなどの2D編集ソフトで合成処理を行う方法が一般的だった。今ではパソコンの処理能力が向上し、写真合成でしか表現できなかったような樹木や人物も、3Dモデルでリアルに配置できる時代となっている。3Dモデルで可能な限り全てを構築することで、より一層リアリティのあるCGパースが実現できるのである。

Photoshopでの合成は便利で簡単だが、ディテールや質感表現など、限界がある部分も多い。特に、シーン全体の調和や自然な影の落ち方、光の当たり方といった部分は、3Dモデルで構築しないと完全には表現できないことが多い。より自然で奥行きのある表現を求めるならば、できる限り3Dで仕上げることが重要である。

そのためには、3Dモデリング技術やマテリアル表現、構図構築といった多岐にわたる知識とスキルが必要となる。これらを駆使することで、より完成度の高いCGパースを制作できるようになるだろう。引き続きモデブログでは、これらの技術や情報を発信していくので、ぜひ参考にしてほしい。

まとめ

以上が建築CGパース制作の中級者からスキルアップするための10のポイントである。
今一度まとめておこう。

□ 豊富なリファレンス資料を用意する
□ 出来る限りディテールの作り込みを行う
□ 面取りを行う
□ 意図的に隙間を設け、陰影を発生させる
□ カメラ外のオブジェクト配置で表現の幅をひろげる
□ アセットの配置を慎重に決める
□ 品質 > レンダリング・対応時間を意識する
□ ランダマイズを利用する
□ 有料素材を利用する
□ 出来る限り3Dモデルで完結させる (Photoshopに頼りすぎない)


以上である。
テクニカルな部分に焦点を当てて紹介してきたが、スキルアップの根底にあるのは、「安易な妥協をしない」という姿勢だ。細部までこだわり抜くことで、作品全体のクオリティは格段に向上する。そして、その積み重ねこそが、他との差を生む要素となる。日々の制作の中でどれだけ丁寧に、そして真剣に向き合うかが、最終的な結果に大きく影響するはずだ。

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