【建築パース素材】プロが徹底解説 切り抜き人物素材とその合成方法
3DCGソフトを利用して建築パースをレンダリングしたけど、なんか物足りないなと感じたことがあるだろう。
そんな時は、人物写真を合成し、スケール感やリアリティを高めることで建築パースの質を上げることができる。
しかしその人物添景データはどこでダウンロードできるのか?無料で利用できるのか?またどうやって建築パースに合成するのか?わからないことがたくさんあるだろう。
この記事では
建築CGパースを制作しているプロが、実際に利用している人物素材サイトを紹介し(なるべく「無料」で利用できるもの)、さらにその利用・合成方法を徹底解説していく。
説明する内容をしっかり理解し実践することで、今まで以上の建築パースが描けるようになるはずだ。
1. 【建築パース素材】切り抜き人物添景サイト紹介
弊社で利用している切り抜き人物素材サイトを紹介していく。いくつかは無料でダウンロードできるデータもあるので、利用規約確認した上で、活用していただきたい。
1-1 : 「NO-N-NO」
日本人の切り抜き人物素材ならこちらのサイト一択となる。
質・量ともに申し分なく、人物以外にも樹木やテクスチャの無料素材もある。
建築パース制作・レタッチを行うには欠かせない素材サイトである。
少しではあるが、人物の無料素材もダウンロードできる。
https://no-n-no.com/?category_id=5b631d3c5496ff1da8002485
こちらの3シリーズは弊社でもよく利用しており、住宅・施設等の人物合成に最適である。新しい「Cutout People」シリーズよりも安定感があり、おすすめである。
最近は、3Dモデルの人物データに力を入れているようで、新しいサイトが立ち上がった。
https://ddd.pink/
3D人物について一定の需要はあるが課題がものすごく多い印象がある。いまのところ利用できる場面は限られ、外装の鳥瞰CG制作時には有用かと思われる。
● 会員登録:必要
● 無料素材ダウンロードデータあり
● 有料素材は単体、セット・DVD販売
● フォーマット:PSD、PNG
1-2 :「MR CUTOUT.COM」
外国人の切り抜き人物添景の場合は3つのサイトが有名である。そのなかのひとつがこの「MR CUTOUT.COM」である。
1日あたり2.5MB上限で、無料でも切り抜き人物素材がダウンロードできる。そのため、こちらのサイトは特におすすめだ。
有料会員になると、月15ドルで70枚までダウンロード可能。
海外のコンペ案パースのような雰囲気に仕上げたい場合は、こちらの素材を利用するとよい。
A3程度に印刷の場合もしくは、そこまで手前に配置しない限り、smallサイズで十分な大きさだ。
● 会員登録:必要
● 無料素材ダウンロードデータあり
● 有料素材はサブスクリプション契約が必要
● フォーマット:PSD、PNG
1-3 :「VIZ PEOPLE」
次はこちらのサイトを紹介しよう。切り抜き人物素材だけでなく、モデルデータやテクスチャもクオリティが高く、建築パースのクオリティアップに役立つことだろう。
いろいろなタイプの人物素材が用意されているというよりは、アングル違いのバリエーション(背後からや上からなど)が多数収納されているので、様々なシーンにあわせた人物合成が可能である。
無料ダウンロードデータもあるのでチェックしてみよう。
https://www.viz-people.com/free-stuff/
● 会員登録:必要
● 無料素材ダウンロードあり
● 有料素材はDL販売
● フォーマット:PSD、PNG
1-4 :「VIShopper」
最近弊社でよく利用している切り抜き人物サイト。
有料メインだが、アジア人のボリュームもありレベルが高い。クレジット購入後、それを使って個別のデータをダウンロードする形式。1データで約300~350円前後なので若干高めである。民族衣装やモデルなど、少し特殊なものが必要になった時に役立つだろう。
無料データも登録なしでダウンロードできる。150枚以上あるので要確認だ。
● 会員登録:必要なし
● 無料素材ダウンロードあり
● 有料素材はDL販売
● フォーマット:PSD
1-5 :「Architizer」
アメリカの建築コミュニティーサイト「Architizer」が無料の人物素材データを配布している。
ファイル形式はPSDで、長手3000ピクセル以上の高解像度で影レイヤーも付いてくる。
利用規約等の記述が見つからなかったので、それぞれ確認の上、利用してみて欲しい。
>>「Architizer」の公式サイトはこちら
2. 【建築パース素材】人物添景の合成方法を解説
それでは実際に人物写真素材を建築パースに合成する解説を行う。
レタッチ元のパースとして、下図のような戸建住宅の外観パースを用意した。
2-1. どのような人物素材を挿入するか考える
建築パースにもストーリが大事である。
今回考えられる候補としては
1. 玄関から出て外出しようとしている家族
2. 車に乗ろうとしている家族
3. 家の外で遊んでいる家族
4. 家に帰ろうとしている家族
が思い浮かぶ。どれがよいと思うか?
・・・・・・・・
この場合多くは4番の「家に帰ろうとしている家族」を選ぶとよい結果が得られる。
その理由は・・・・・・・・・・「後ろ姿である」からだ。
建築パースはあくまでもイメージ図であり、写真ではない。その建築パースに人の写真が顔つき(正面向き)で合成されているとリアリティのバランスが悪くなってしまう場合が多い。
そのため、後ろ姿程度の「抽象性」がちょうどよいのである。試しに、いままで作成したことのある建築パースで人物を後ろ姿多めにしてみて欲しい。以前の雰囲気よりも一段階クオリティが上がったように見えるはずだ。
2-2. どんな状態の写真素材が建築パースにはよいのか
今度は人物写真の足元に注目してみよう。
その素材写真自体にパースがかかっているものだと、うまく合成するのはそもそも難しい。
具体的に選んではいけないものの例を見ていく。
この画像に描かれた赤ラインに注目して欲しい。パースがかかっている写真はこのラインの角度が大きい傾向がある。(歩行中等の足をあげた状態のものは除く)なのでこのパターンは避けた方がよい。
一方で、下の画像のように
描かれたラインの角度がゆるやかなものを選ぶと、合成がうまくいく場合が多い。
ちなみに先ほど紹介した「MR CUTOUT.COM」の素材については、このあたりでの問題が少ないので建築パースには利用がしやすいのである。
2-3. パース上ではどのくらいの大きさなのか
当然だが、人の大きさがリアルなものとかけ離れてしまうと、不自然な合成結果になるので注意が必要だ。
慣れてしまえば感覚的に合成できるようになるが、それまでは3Dソフトの方で確認しながら進めたほうがよい。
ここからCinema4Dでの作業による解説になる。
ウィンドウ上部にある立方体タブを長押しで出るパレットに「フィギュア」という項目があるのでクリック。
レイヤーにフィギュアが追加され、属性パレットに項目が出てくるので、一般的な身長170cmに設定する。
合成しようと想定している場所に配置して、頭と足の位置を確認しておこう。
また、フィギュアに当たる太陽光と落とす影もチェックしておくとよいだろう。
2-4. 実際に人物素材を建築パースに合成する
今回は上の人物写真素材を使って合成をしていく。パース左側から帰宅するイメージで進めていく。足元の角度もよい感じだ。
Cinema4D上で確認した大きさを基準に写真を配置する。(上画像左)
このままでは明度が高いので、元画像に馴染むよう「明るさ・コントラスト」で調整。
その後、「色相・彩度」で<彩度>の項目をマイナスにもっていくとうまく行くことが多い。
太陽光のあたる角度や落とす影の大きさは問題なさそうなので、
影を少し強調するだけでよいかと思う。(上画像右)
このような形でレタッチが完了。
ちなみにこちらが背面スタイルの人物写真のレタッチ結果になる。
太陽光の当たる方向がパースと逆なので今回採用しなかったが、言われないとわからないレベルではある。
3. その他添景素材(樹木・3Dモデル・テクスチャ)記事紹介
建築パース制作では人物添景以外の樹木切り抜き素材や、3DCG上での3Dデータ・テクスチャなどの素材が必要となる。
それらも当ブログ記事で紹介・解説しているので参考にしていただきたい。
樹木・低木切り抜き添景・3Dモデル・テクスチャデーターについての記事はこちら。
>>【建築パース素材】プロが徹底解説 切り抜き樹木・植栽とその合成方法
>>【建築パース素材】プロが普段から利用している3Dモデルサイト7選
>>【建築パース素材】無料で利用できる高品質テクスチャサイト【6選】
【建築パース素材】切り抜き人物添景合成 まとめ
以上が、日々建築CG制作者のプロが利用している、切り抜き人物素材とその利用・合成方法となる。
建築パースのクオリティアップに必要な素材選びや、合成方法、ストーリーの作り方などのポイントを紹介した。
海外のコンペや作品集でみるような雰囲気に仕上げることもそう難しくはないと思われたのではないだろうか。
今回紹介したポイントを意識しながら素材を選び・合成を試みれば、間違いなく建築パースのクオリティが高まるはずだ。
ぜひ参考にしてクオリティアップにつなげてほしい。
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