建築パース・CGパース制作のプロが検証!画像生成AIでイメージ通りの建築パースはできるのか?
建築業界で今、画像生成AIを用いた建築CGの制作が注目を集めている。多くの方がこの技術によって、思い通りのパースが簡単にできるのではないかと期待しているだろう。
結論を先に述べると、現状は残念ながら「完全にイメージ通り」のCGパースを生成することは難しい。
しかしこの分野の進歩は、設計者に新しい創造の可能性を提供してくれるのは間違いないはずだ。
本記事では、画像生成AIの限界と、最適な利用方法について詳しく解説していく。さらに、画像生成における効果的なプロンプトや構成するワード、具体的な生成例を紹介する。
この情報を参考にし、自身のプロジェクトに応用することで、高品質なCGを簡単に生成できるだろう。さらに、この技術を上手に活用することで、建築設計のプロセスに大きな変化をもたらす可能性を感じ取れるはずである。
1. 画像生成AIでイメージ通りの建築パース・CGパースは出来るのか
建築設計やインテリアデザインの分野では、画像生成AIへの期待が高まっている。
プロンプトと呼ばれる指示文を入力するだけで、意図したイメージ画像が生成されるため、設計デザインの業務に革命をもたらす可能性があるからだ。
だが現実には、画像生成AIを使って「完全にイメージ通り」の建築CGパースを作成することは難しい。
この章では、その技術の実態と活用方法について詳しく解説していく。
1-1. 画像生成AIで出来ること出来ないこと
現状、画像生成AIでは
できること・・・ざっくりとした高品質なイメージ画像の生成
できないこと・・・細部まで希望を反映させた画像の生成
と考える。
AIは指示された内容に基づいて、建物のおおまかな形状や雰囲気を素早く描き出すことができる。そのため、建築やインテリアの設計初期段階では、様々なスタイルや選択肢を視覚化できることで、独創的なアイディア創出にとても役立つだろう。
たとえばオフィスビルなどの外観をAIに生成させようとすると、多くのデザインパターンをすぐに出してくれる。設計者はこれを参考にイメージをひろげ、設計へのインスピレーションとして活用することができるのだ。
しかしながら、細かいデザイン要素を希望通りに反映させるのはまだ難しい。
素材の質感や色、細部のディテールに至るまでの緻密な表現は、人間の設計者やデザイナー、ビジュアルを制作する者の技術が必要となる。
結局のところ画像生成AIは、設計の初期段階でとても有効に活用できる。しかし全プロセスを担うものではなく、現状はアシスタント的な立ち位置が最適と考えられる。
1-2. 初期構想のイメージ作りにはとても強力
設計初期の段階で、まだ具体的でないアイデアや概念を視覚化しなければならない場面があるだろう。
そんなときAIの活用が非常に有効的だ。
AIは短時間で多くのデザイン案を生成することができ、その選択肢を活用して、施主へのプレゼンやイメージの共有に役立てることができるからだ。
施主が望むイメージや方向性を初期段階で把握することは、設計プロセスにおいて非常に重要である。
次の章では、具体的にどうやって画像を生成するのかを解説していく。
2. Midjourneyを利用した画像生成例
実際に画像生成AI(Midjourney)を利用して生成できる建築・インテリアイメージと、どのような指示が必要となるのかを解説していく。
Midjourney(ミッドジャーニー)とは?
AI技術を利用した画像生成サービスの一種で、プロンプトと呼ばれる指示文を入力することで意図した画像をつくることができるツールである。有料ではあるが、簡単に操作ができ、多様な用途に対応しているので手軽に始めることができる。
公式サイト
Midjourneyの具体的な使い方については、こちらのサイトで確認してほしい。
2-1. 建築パース・CGパース生成で有効なプロンプト
「プロンプトと言われても、英語で入力する必要があるみたいだし、実際どんなこと指定すればいいのかよくわからない・・・」そんな悩みをよく見聞きする。決まった構文というものはないものの、指定する内容には一定のコツがある。必要なワードとして
<建物の種類>・<建築スタイル>・<マテリアル>・<環境>・<光>・<構図>・<建築家スタイル>
があり、これらのジャンルワードをプロンプトに入れれば、求めているものに近い画像が生成できるだろう。
特に建築家スタイルのワードは方向性を指し示すにとても有効である。
コピー&ペーストして利用できるよう箇条書きでまとめておく。
<建物の種類>のワード | <建築スタイル>のワード | <建物の種類>のワード |
theater architecture museum building modern residential house Apartment building University Library Hotel commercial buildings skyscraper shopping mall concert hall supermarket | modernism post modernism Contemporary Architecture international style organic architecture Industrial Architecture Bauhaus High tech | concrete glass Metal sotne wood Carbon fiber wood veneer |
<環境>のワード | <光>のワード | <構図>のワード |
forest green fields facing the road downtown mountain Street corner waterfront seaside winter raining located in tokyo JAPAN | Natural light Direct Sunlight Floodlight Volumetric Lighting night light Direct Sunlight on facade cinematic lighting mood light | Top-view Front perspective Iaometric Two-Point Perspective One-Point Perspective birds-eye-view |
<建築家スタイル>のワード | <描画スタイル>のワード | <その他>のワード |
Zaha Hadid Frank Gehry Peter Zumthor OMA Architecture SANAA architects TADAO ANDO | plastic raw model architecture sketch watercolor architecture concept art Flat illustration digital painting wood axonometric diagram photorealiszm photo taken with nikon d750 | glass facade metal structure inside concrete facade composite materials facade includes glass and metal during a bright sunrise in TOKYO modern wood louver facade in the style of japanese textural detail large windows |
最後に付け足すワード
「 –ar 16:9」・・・アスペクト比の指定が可能。
「–v6.0」・・・ミッドジャーニーのバージョンを指定する
2-2. プロジェクト別建築パース・CGパース生成例とそのプロンプト
上でまとめたワードを組み合わせてプロンプトを構成していく。
基本構成は
<建物の種類>+<建築スタイル>+<建築家>+<マテリアル>+<環境>+<光>+<構図>+<その他>+(–ar 16:9 –v6.0)
順番は気にする必要はない。自身のプロジェクトやイメージに合わせて、アレンジしてみよう。
以下は筆者が生成したAI画像とプロンプトの例である。参考にしてほしい。
□ 生成例1
「ザハ・ハディドによって建築された都市部の美術館」のイメージを生成AIで作成したアウトプット
利用したプロンプト : museum building, downtown, Zaha Hadid,Top-view,sun light –ar 16:9 –v6.0
□ 生成例2
「SANAAによって設計されたガラスファサードによる商業施設」のイメージを生成AIで作成したアウトプット
利用したプロンプト: commercial buildings, Contemporary Architecture, glass,Direct Sunlight on facade,SANAA architects,–ar 16:9 –v6.0
□ 生成例3
「Herzog&demeuronによって設計されたホテルの外観」のイメージを生成AIで作成したアウトプット
利用したプロンプト: hotel facade, international style,cinematic lighting in TOKYO ,Front perspective,Herzog & de Meuron –ar 16:9 –v 6.0
□ 生成例4
「MVRDVによって設計された現代的なオフィス」のイメージを生成AIで作成したアウトプット
利用したプロンプト: high-tech offices, Contemporary Architecture,composite materials facade includes glass and metal,urban design in downtown TOKYO,green,MVRDV,aerial view
2-4. インテリアCGパース生成で有効なプロンプト
建築ジャンルのワードとあまり違いはないが、インテリアシーンの生成用のワードもまとめておこう。
<プロジェクトタイプ>+<内装デザインスタイル>+<マテリアル>+<家具>+<光>
<プロジェクト>のワード | <内装スタイル>のワード | <マテリアル>のワード |
Living room Dining room office showroom library hotel robby coffee shop restaurant | Modern Interior Design Contemporary Interior Design Minimalist Interior Design Mid Century Interior Design Bohemian Interior Design Industrial Interior Design Scandinavian Interior Design Asian Zen Interior Design | Modern Hardwood flooring white flooring concrete and meta black metal window frame |
<家具>のワード | <その他>のワード | |
Fabric Sofa Leather Sofa plants wood furniture transparent plastic furniture | people walking people working large window in the forest |
2-5. プロジェクト別インテリアCGパース生成例とそのプロンプト
□ 生成例1
「ノーマン・フォスターによってデザインされたトヨタのショールーム」のイメージを生成AIで作成したアウトプット
利用したプロンプト: toyota showroom,modern design, japanese people walking, Contemporary Interior Design, Norman Foster,cinematic lighting –ar 16:9 –v 6.0
□ 生成例2
「サポーズデザインによってデザインされたオフィス」のイメージを生成AIで作成したアウトプット
利用したプロンプト: office, people working,Industrial Interior Design,Hardwood flooring,plants,suppose design office –ar 16:9 –v 6.0
□ 生成例3
「デヴィッドチッパーフィールドによってデザインされたイタリアンレストラン」のイメージを生成AIで作成したアウトプット
利用したプロンプト: italian restaurant,Contemporary Interior Design,wood furniture,Fabric Sofa,David Alan Chipperfield –ar 16:9 –v 6.0
□ 生成例4
「OMAによってデザインされたホテルのロビー」のイメージを生成AIで作成したアウトプット
利用したプロンプト: hotel robby, people walking,Minimalist Interior Design,Leather Sofa,OMA –ar 16:9 –v 6.0
3. 画像生成AIと建築パース・CGパース制作についてよくある質問
4. 画像生成AIによる建築パース・CGパースの今後
画像生成AIの進化によって、建築CGパース制作の現場にも新たな波が到来している。一部のCGパース制作者は、この新しい技術によって仕事を奪われるのではないかという不安を抱く方もいるだろう。しかし、現段階での画像生成AIの能力を考えると、人間の技術の必要性は依然として高い。
確かに、画像生成AIは初期構想段階でのビジュアル化において顕著な効果を発揮している。建築コンペでのアイデア出しや施主とのイメージ共有など、様々な場面で建築業界に貢献しているのは事実である。
しかし、建築CGパースの制作において求められる精度と細部の表現に関しては、AIの能力だけではまだ十分ではない。建築パースの役割のひとつとして、設計者やデザイナーのイメージを「正確に」視覚化し、関係者に的確に伝えることにある。細部のディテールに至るまで緻密な作業が求められるため、AI技術では対応が難しいというのが現状だ。
結論として、画像生成AIの発展は建築パースの分野において重要な影響を及ぼすことは間違いない。しかし、その進歩が全ての作業が人間からAIへと移り変わるのではなく、今より更に人間とAIの協働の形が重要になってくる場面が訪れるのだろう。
5. まとめ
画像生成AIは、建築デザインの初期構想段階におけるビジュアル化や、多様なデザイン案の迅速な提示という点において、強力な力を発揮する技術である。しかしながら、ディテール表現や細かい理想の具現化には、依然として人間の技術が不可欠である。
本記事で紹介されたプロンプトの使用法や具体的な生成例は、画像生成AIを自身のプロジェクトに応用する際のガイドとなるはずだ。画像生成AIの活用は、建築CGパースの制作プロセスを効率化し、創造的なアイディアの発展に寄与することが期待される。
AIと人間の制作者との協働は、建築デザインの未来を形成する上で、ますます重要な要素となっていくはずである。
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