こんなはずじゃなかった!建築パース・CGパース外注依頼の失敗パターン6選と回避ポイント

建築パース・CGパースの制作を外注する際、成果物が期待通りに仕上がらなかった・予算が想定以上に膨らんでしまった・スケジュールが遅れたといった問題に直面することがある。

特に変更が何度も発生したり、デザインの方向性が曖昧なまま進行してしまうと、クオリティにばらつきが生じたり、予期せぬ追加費用が発生する原因となりやすい。

こうしたトラブルの多くは、依頼の段階で計画が不十分だったり、制作プロセスの想定が甘かったことに起因する。

本記事では、建築パース・CGパース制作においてよくある失敗パターンと、その回避策を紹介していく。これらのポイントを押さえることで、スムーズにプロジェクトを進行できるだけでなく、トラブルを回避しつつ、期待通りの高品質な成果物を手にすることができるだろう。

目次

ケース①|変更が多く発生して、追加費用が膨大になってしまった

建築パース・CGパース制作では、依頼後に想定以上の変更が発生し、その対応への追加費用によって、最終的に予算を大きく超えてしまったというケースは少なくない。

建築パースは、計画が完了したデザインの内容をもとに制作が行われるため、変更が重なると作業負担が増え、コストへの影響が出やすい。しかし多くのクライアントが「変更すると追加の費用が発生する」という点に驚くことが多く、トラブルに発展するケースもある。

そこで、追加費用が発生しやすい原因と、無駄なコストを防ぐための対策について解説する。

原因
・計画の段階でデザインの方向性が明確になっていないまま建築パース・CGパース制作が進行してしまった
・依頼段階で提供資料や図面に不備があり、それに伴う修正・変更が発生した
・プロジェクトの進行中にクライアントの要望が変わり、大規模な変更が求められた

>>>関連記事 建築パース・CGパース依頼時に直面する「修正」と「変更」の違いを詳しく解説

ケース②|家具の選定がバラバラで、統一感のない内観パースになってしまった

デザインにおいては、シンプルで一貫したコンセプトを持つことが重要である。
複数の意見を取り入れすぎてコンセプトが曖昧になると、統一感を失い、バラバラでまとまりのないデザインになってしまうからだ。

この問題は特に内観パース制作の、家具や小物の選定においてよく見られる。
たとえば、部屋全体がモダンでシンプルなデザインコンセプトでまとまっているにもかかわらず、クラシックな家具や異なるアクセントカラーを取り入れると、全体の調和が崩れ、統一感が失われることがある。

では、なぜこうした問題が発生するのか、その原因を見ていこう。

原因
・デザイナーが提案したコンセプトに対し、関係者それぞれが異なる意見を出してしまう
・クライアントやプロジェクト関係者が、それぞれの好みや意見を反映させようとする
・明確な方向性やコンセプトがない

◎ 回避策
統一感のないデザインを防ぐためには、プロジェクトの初期段階で明確なコンセプトを固め、関係者全員で共有することが重要だ。以下の対策を講じることで、家具や小物の選定においても統一感を保ちながら進めることができる。

デザインコンセプトを明確にする
最初にデザインの方向性を明確に設定し、関係者間でしっかり共有することが重要である。具体的なデザインイメージやコンセプトをビジュアル資料としてまとめ、プロジェクト全体の指針とすることで、関係者間で意見が分かれるリスクを減らすとよい。

・関係者間でコンセプトを一貫して守る
プロジェクトに関わる全ての関係者が、デザインの方向性を一貫して守ることが重要である途中で追加の意見が出た際にも、最初に定めたコンセプトに合致するかどうかを基準に判断し、調和を保つ。

・デザイナーがリーダーシップを発揮する
関係者からの意見を取り入れつつ、デザイン全体の統一感を保つために、デザイナーがリーダーシップを発揮することが求められる。最終的な決定権をデザイナーが持ち、全体のバランスを考慮しながら選定を進めることで、統一感のあるデザインを維持することができる。

ケース③|内観パースがよい出来だったので、外観パースも依頼したが期待通りではなかった

内観パースの仕上がりが良かったため、同じ制作会社に外観パースも依頼したが、完成品のクオリティが期待通りではなかったというケースがある。内観パースが得意な会社であれば、外観パースも同じように仕上がるだろうと考えがちだが、実際には満足のいく仕上がりにならないことが多い。

では、こうした問題がなぜ起きるのか、その原因を見ていこう。

原因
・内観パースと外観パースで必要とされるスキルが異なり、それが品質に影響する
・制作会社が外観パースに対する十分な実績や経験を持たないため、完成品のクオリティに差が出る

回避策
外観パースのクオリティを確保するためには、内観と外観で必要とされるスキルや経験の違いを理解し、依頼時にこれらの点をしっかりと確認することが重要である。以下に、それぞれの原因に対する具体的な対策を解説していく。

・外観パースの制作事例を確認しておく
内観パースと外観パースでは必要とされる技術が異なるため、必ず制作会社の外観パースの制作事例を確認することが必要である。内観パースだけの成功例をもとに外観も依頼すると、期待にそぐわない結果が出る可能性がある。尚、外観・内観共に一定のレベル以上の品質を保つ制作会社は意外と少ない。

・外観パースに強い制作会社を選ぶ
外観パースは、建物全体のバランス、自然光の表現、周囲の環境との調和といった複雑な要素を扱うため、内観パースとは異なるスキルが求められる。そのため、外観パースの制作経験が豊富な会社を選定することが大切である。質の高い外観パースを提供できる制作会社は、内観パースも上手な場合が多い。

ケース④|制作事例を小さな画像でしか確認していなかった

CGパースの制作事例を確認する際に、小さな画像だけで判断してしまい、実際に制作されたパースのクオリティが期待に達しなかったというケースがある。スマホやSNS上での小さい画像では、ディテールの粗さが隠れてしまい、仕上がりの品質や細部を正確に把握できないことが多い。

では、なぜこうした問題が発生するのか、その原因を見ていこう。

原因
・小さな画像では、解像度が低いため細かい部分の粗さやディテールの欠如が見えにくい
・小さい画像で確認すると、CGパースならではの質感や光・影の表現が適切に評価できない
・小さい画像でみるCGパースは、シンプルによく見えがち

回避策
制作事例を確認する際には、以下の対策を講じることで、仕上がりに対する不満を未然に防ぐことができる。

・大きな画像で事例を確認する
小さな画像では、細かいディテールやクオリティの粗さを見落とす可能性が高い。CGパースの質感や光の表現などを正確に評価するためには、制作事例を必ず大きな画像で確認することが重要だ。高解像度の画像を制作会社にリクエストし、プロジェクトの初期段階で仕上がりをきちんと確認することで、後のトラブルを防ぐことができる。

・SNSやスマートフォンだけで確認しない
SNSやスマートフォンに表示される画像は圧縮されていることが多く、実際のクオリティが正確に反映されないことがある。そのため、スマートフォンやSNSだけでなく、PCの大きなモニターで事例を確認することが大切だ。これにより、細部まで確認でき、実際の仕上がりに納得できる判断ができる。

ケース⑤|初校から修正対応機関をスケジュールに組み込まなかったので、納期が遅れた

初校後は、依頼者の要望に応じて修正を重ね理想のパースに仕上げるのが通常のプロセスである。その修正にかかる時間を見込まずにスケジュールを組んでしまうと、納期に間に合わなくなったり、十分なクオリティを実現する時間が不足するケースがある。特に、初校の出来や依頼者の要望によって修正範囲が変わるため、スケジュールに余裕がないとプロジェクト全体に遅れが生じるリスクが高まる。

では、この問題がなぜ発生するのか、その原因を見ていこう。

原因
・初校の段階での完成度が高いと見積もってしまい、修正の必要性を過小評価していた
・制作プロセス全体でスケジュールに余裕を持たせていなかった
・単純に修正に必要な時間を想定していなかった

回避策
修正に対応するためのスケジュールを計画する際、初校の段階でどの程度の完成度になるかを正確に予測するのは難しい。修正の範囲や内容が依頼者のフィードバック次第で大きく変わることがあるため、以下の対策を講じることで、余裕を持ったスケジュールを確保し、納期遅延やクオリティ低下を防ぐことができる。

・修正に必要な時間を見積もり、余裕を持たせる
初校がどれほど完成度の高いものになるかは予測が難しいため、修正対応の時間は常に余裕を持って見積もる必要がある。特に、複数の修正が発生する可能性があることを想定し、修正作業にかかる時間やリソースを十分に確保しておくことが重要だ。

・スケジュール全体に余裕を持たせる
修正作業が予定以上にかかることを想定し、制作プロセス全体のスケジュールに余裕を持たせることが必要だ。スケジュールがタイトになると、クオリティを保ったまま修正を行うのが難しくなるため、最初から余裕を持たせて進行することで、プロジェクト全体の成功率を高めることができる。

・初校の段階で修正範囲が広がるリスクを考慮する
初校の段階で修正の必要性が軽視されると、その後のスケジュールに大きな負担がかかる。初校が完成に近い状態になることを期待せず、あらかじめ修正が発生する可能性を高く見積もってスケジュールを組むことで、納期遅延のリスクを減らすことができる。

ケース⑥|予算重視で海外制作会社に依頼したがイメージと異なるものが出来上がった

最近は、海外のCG制作プロダクションを通して、日本国内の建築パース・CGパースを制作するケースが増えてきている。予算が限られている場合や、スケジュールに余裕がなくて依頼する際はとても魅力的だ。
しかし日本国内の制作と比べて、細かなテイストの反映や選定する家具・小物の基準が、どうしても海外の価値観によるものになってしまう。ここ最近は、このような悩みを弊社に相談される機会が多くなっている。

では、このような問題がなぜ発生するのか、その原因を見ていこう。

原因
・海外の制作会社と日本国内では、デザインに対する美意識やテイストの基準が異なるため、細かなニュアンスが伝わりにくい。
・言語や文化的な違いがあり、要望が正確に伝わらない。
・家具や小物の選定基準が日本国内のスタイルや市場のニーズとずれてしまうことが多い。

回避策
海外制作会社に依頼する場合、国内制作と同じ感覚で進めると思わぬトラブルが発生することが多い。そのため、以下のポイントを意識しながら、海外制作の利点を最大限に活かしつつ、イメージ通りの結果を得るための対策を講じることが重要である。

・デザインの美意識やテイストの違いに対する対策
海外の制作会社では、日本の市場で一般的なデザインの美意識や細部のテイストが異なることが多い。これに対応するため、制作会社の過去の実績をしっかりと確認し、日本国内のニーズやスタイルに合致する作品があるかを確認することが大切だ。

・言語や文化の違いに対する対策
言語や文化の違いによるコミュニケーションのズレを防ぐため、プロジェクト開始前に、明確な指示書や詳細な資料を準備することが重要だ。具体的なイメージ画像やリファレンスを共有することで、言葉の壁を乗り越え、デザインの意図を正確に伝えることができる。また、制作会社によっては日本人の担当者が管理をしてくれる場合もあるので、その点も依頼前に確認しておくことをお勧めする。

・家具や小物の選定基準に対する対策
海外制作では、選定される家具や小物が日本市場の基準と異なることがあるため、依頼時に具体的な家具や小物の要望を明示することが重要である。日本国内で使用されている家具や小物のリストやサンプルを提供することで、現地の価値観に左右されずに希望するテイストを反映することが可能になる。

まとめ

建築パース・CGパース制作外注時には、様々な問題に直面する場面がある。そのほとんどが、事前の準備と想定で回避することが可能だ。

今回紹介したこの6パターンは、よく起こりがちな失敗パターンではあるが、どれも事前の計画や想定を怠らなければ避けられることが分かっていただけたはずだ。

こうした失敗を未然に防ぐためには、依頼者としての準備が不可欠である。制作会社との打ち合わせや、資料の整理、修正スケジュールの調整、さらに制作事例の確認を事前に行うことで、後のトラブルを大幅に減らすことができる。

最終的には、どれだけ事前にリスクを見越して対応できるかが、プロジェクトの成否を左右する。高品質な建築パース・CGパースを手にするためにも、事前の準備をしっかりと進めていただきたい。

  • URLをコピーしました!
目次