【Proxy/プロキシとは?】建築パース・CGパース大規模シーンに必須ツール

3DCG制作において、複雑なシーンや高ポリゴンモデルを扱い、パソコンの処理速度が下がり作業効率が悪くなるといった経験をしたことがあるだろう。

特に大規模なプロジェクトや多数のオブジェクトを扱う場面では、この問題に直面する機会が多い。こうした問題を解決するための有効な手段が、今回紹介する「Proxy/プロキシ」である。

プロキシを使用すると、データ量を軽減し、作業中の処理負荷を抑えることができる。たとえば、都市の街並みや森のようなシーンで、何百ポリゴンものオブジェクトを配置する際にプロキシを使えば、作業効率を大幅に向上させることができるのである。

プロキシは単なる効率化ツールではなく、3DCG制作に欠かせない技術のひとつである。この記事では、プロキシが制作環境の改善にどう役立つか、その具体的なメリットを詳しく解説する。

目次

1. Proxy(プロキシ)とは?

プロキシは、3DCG制作において複雑なモデルや大規模なシーンを効率的に扱うための技術である。

高精細なモデルや広範囲のシーンをそのまま利用すると、コンピュータへの負荷が増え、作業環境が重くなることがある。しかし、プロキシを使うことで、モデルを軽量化したデータに置き換え、動作をスムーズに保つことができるのである。さらに、レンダリング時には軽量化されたモデルではなく、オリジナルの高品質なデータが反映されるため、最終的なクオリティも維持される。

プロキシは特に、大規模なシーンで効果を発揮する。たとえば、都市景観を作成する際、樹木や建物など同一のオブジェクトを大量に配置する場合、プロキシを利用すればデータ量を大幅に削減できる。それにより、シーンの管理が軽くなり、レンダリング時には正確なディテールを保ったまま高品質な出力が可能だ。

このように、プロキシは複雑で大規模なシーンを効率よく管理し、ワークフローを大幅に改善するために不可欠な技術である。

2. Proxy(プロキシ)を利用するメリットとは?

プロキシの導入は、3DCG制作における多くの課題を解決する不可欠な技術である。特に、大規模なプロジェクトや複雑なシーンでは、プロキシを使うことで作業全体の効率を高め、快適な作業環境を実現できる。ここでは、プロキシを活用することで得られる2つの大きなメリットについて詳しく説明する。

2-1. シーンデータの軽量化

プロキシを利用する最大のメリットの一つは、シーンデータの軽量化だ。複雑なモデルや多数のオブジェクトを含むシーンでも、プロキシを使うことでデータ量を大幅に削減できる。これにより、コンピュータの処理負荷が軽減され、モデリングやアニメーションの作業効率が飛躍的に向上する。

また、インスタンス化という手法で、オブジェクトを複数配置しても実際のデータ量を増やさずに扱うことが可能だ。主に、森林の木々や下草など、同じオブジェクトを何度も使用するシーンでは、プロキシとインスタンス化を組み合わせることで、システム負荷を最小限に抑えながら大規模なシーンを効率よく構築できる。

2-2. メモリの節約

プロキシは、シーン内にあるオブジェクトデータを効率的に管理することで、メモリ使用量を大幅に削減できる。特にポリゴン数が多い複雑なモデルを扱う場合、メモリ消費が問題になることが多いが、プロキシを活用することでその負担を軽減できる。そのため、システムが安定し、作業中のクラッシュを防ぎながら、全体のパフォーマンスも向上させることが可能であるプロキシを導入することで、よりスムーズで効率的な制作環境を実現できる。

3. Proxy(プロキシ)の設定方法

実際に3dsMax+ChaosCoronaの環境において、オブジェクトのProxy化を説明していく。

まずは、白ホリゾントのみのシーンに高ポリゴンの樹木3Dモデルを4本配置している。ポリゴンの合計数は360万に及ぶ。(通常業務では、シーン全体の総ポリゴン数を200~300万前後に抑えたいところ) このファイルサイズは「145MB」。2048×1448ピクセルのレンダリングに要する時間は 「1:09」だった。

次に、これらをプロキシ化した結果を見ていこう。まずはプロキシ化したい4本の樹木を選択し、Coronaメニューから「Corona Proxy Exporter」を選択してウィンドウを表示させる。プロキシファイルの保存場所を指定し、設定を行ったら最下段の「Export selected objects」ボタンをクリックでプロキシ化が開始される。

プロキシ化した樹木オブジェクトの表示が点々に変わる。合計ポリゴン数は360万から14へと激減した。
ファイルサイズも「640KB」と小さくなり、2048×1448ピクセルのレンダリングに要する時間は「 1:10」と変わらなかった。

ポリゴン数が減少し、ファイルサイズも小さくなるため作業効率は向上するが、レンダリング時間は変化がない場合が多い。

プロキシ化されたオブジェクトの表示方法は4種類ある。一般的には、四角の輪郭線のみの表示の「Wire bounding box」か「Point cloud」である。オブジェクトを選択して、CoronaProxyモディファイヤー上で変更が可能。プロキシから以前のオリジナルモデルに戻したい場合は、モディファイヤー上の「Duplicate to mesh」を選択するとコピーが生成される。

4. Proxy(プロキシ)の活用事例

弊社の制作事例から、Proxyを活用しているシーンを紹介する。ポリゴン数の多いオブジェクト(樹木、植栽、車両など)は、ほとんどの場合においてProxyを利用している。これは、3ds Maxというソフトの特性上、扱うファイル容量を可能な限り軽減しておいた方がよいからだ。具体的なシーンファイルをもとに説明していこう。

このように樹木に囲まれたシーンでは、ほとんどの木々や下草がプロキシ化されている。オリジナルデータをそのまま使用した場合、数百万ポリゴンに及ぶ巨大なファイルとなり、シーンを開くだけでも困難な状態になる。そこで、プロキシを活用することで、軽量化しつつビジュアルのクオリティを保つことができる。

シーンファイルを見ると、両サイドや建物奥に配置された高木がすべてプロキシ化され、Point cloud表示となっているのがわかるだろう。また、遠景の山々もプロキシ化した樹木をランダム配置して表現している。

室内シーンでも同様だ。窓から見える植栽はすべてプロキシ化されており、変更予定のない家具や小物についてもプロキシ化を行うことが多い。こうした方法を取ることで、ファイルの軽量化とシーンの処理効率を大幅に向上させることができる。

5. Proxy(プロキシ)についてのQ&A

プロキシはどのような状況で使うと効果的ですか?

大規模なシーンや高ポリゴンのオブジェクトを含むプロジェクト、または同じオブジェクトを繰り返し配置する際に有効です。都市景観や森林などが代表例です。

プロキシを使用すると、最終的なレンダリングの品質は低下しますか?

いいえ。プロキシは軽量化されたデータを作業中に使うだけで、最終レンダリング時には元の高品質なデータが使用されるため、クオリティが低下することはありません。

プロキシを使わない場合、どのような問題が発生しますか?

シーンのデータ量が膨大になるため、コンピュータの処理負荷が高くなり、作業が遅くなったり、ソフトがクラッシュしたりするリスクがあります。

プロキシとインスタンス化の違いは何ですか?

プロキシはオブジェクトの軽量化を目的とした代替データであり、インスタンス化は同じオブジェクトを複数回使用する際にデータ量を抑えるための手法です。両者を組み合わせることで、さらに効率よくシーンを管理できます。

プロキシはレンダリング時間にどのような影響を与えますか?

残念ながらレンダリング時間については大きな変化は見られません。

プロキシを作成する際、ファイルサイズにどのくらいの差が出ますか?

元のモデルの複雑さやテクスチャの解像度によりますが、プロキシを使用することでファイルサイズが数分の一に減ることが一般的です。これにより、メモリやディスク容量を節約できます。

6. まとめ

プロキシは、3DCG制作においてデータ量を大幅に軽減し、作業効率を向上させるための重要な技術である。特に大規模なプロジェクトや複雑なシーンでは、膨大なデータが作業環境に負担をかけ、メモリを圧迫してしまう。プロキシを活用することで、そうした問題を効果的に解消し、快適な作業環境を保ちながら高品質な結果を実現できる。

たとえば、都市景観や自然環境を表現するシーンでは、同じオブジェクトを大量に配置するケースが多い。通常であれば、シーンデータが非常に重くなり、パソコンが遅延したり、フリーズすることもある。しかし、プロキシを利用すれば、こうしたシーンにおいても負荷を軽減しながら、オリジナルのモデルを正確にレンダリングすることが可能だ。プロキシによって軽量化されたデータは、作業中の負担を減らし、作業速度を大幅に向上させる。

また、プロキシの活用は単にデータの軽量化だけでなく、プロジェクト全体のスケジュール管理にも大きく貢献する。制作フローが効率化されることで、厳しい納期に追われるプロジェクトでも、遅延のリスクを抑えながら高品質なアウトプットを実現できる。結果として、プロキシを使用することで、クリエイティブな作業に集中する時間が増え、プロジェクトの成功率が高まるはずだ。

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