インテリアCGパース添削事例 クオリティアップのための改善ポイント解説
建築パース・CGパース上達のためには、実際に制作した作品を経験豊富なプロの視点で添削してもらい、適切なアドバイスを受けることが効率的で効果的だ。
プロによるフィードバックを受けることで、自己学習では気づきにくい技術的なポイントや改善点を見つけることができる。具体的なアドバイスは、制作のクオリティを一気に向上させ、より洗練されたパース制作を可能にする。自分一人での試行錯誤も大事だが、プロの目線から得られる洞察は非常に価値が高い。
この記事では、弊社CG制作スタッフが10数年前に作成したインテリアCGを題材に、プロの視点からどのように添削され、何を重視して改善が行われたのかを紹介する。アングルの選定や家具の配置、色味や小物のバランスなど、具体的な変更点をビフォー・アフターの画像とともに解説していく。
建築パースやCGパース制作において、どのような意図で決定や修正が行われるかを理解でき、制作のクオリティを高めるためのポイントが明確になる。ぜひ参考にしてもらい、自身のスキル向上に役立ててほしい。
1. 添削題材CGパースの紹介
今回の添削題材となるインテリアCGパースと、その添削結果がこちらである。
壁や床、天井といった内装要素や家具について、実務では仕様の指定が行われる場合が多いので、変更は加えていない。
今回の調整は、全体のバランスを整え、より視覚的に魅力的な空間を作り出すための部分に焦点を当てている。具体的に調整した内容は以下の4つだ。
□ アングル変更
視点の変更によって空間の広がりや奥行きを強調し、視覚的な魅力を高める。適切なアングルは、空間の印象を大きく左右するため、非常に重要な要素となる。
□ 家具配置の位置調整
家具の配置バランスを微調整することで、空間の見た目の美しさを向上させる。
□ 色味の検討
全体のカラーバランスを見直し、落ち着いた雰囲気を持たせるように調整する。色味の調整は、空間の雰囲気やテーマを強調する上で重要な役割を果たす。
□ 小物の配置
小物の位置や種類を調整することで、空間にアクセントを加え、より生活感やリアリティを引き出す。小物はディテールを作り出すため、全体の完成度を高める重要な要素である。
これらのポイントを順番に見ていこう。それぞれの調整が、どのようにパース全体に影響を与えるのかを詳しく解説する。小さな変更でも、全体の印象が大きく変わることがわかるはずだ。
2. アングルの変更
まずはアングルについて詳しく見ていこう。
今回のCGパースで採用されたアングルには、大きな開口部からの景色を効果的に見せること、そしてキッチンからリビングダイニングへとつながる空間の広がりを表現する意図があると考えられる。角度をつけた構図は、空間に動きを与え、視覚的な興味を引くことができる反面、そのバランスを保つのは難しい。最適なアングルを見つけるためには、空間全体を理解し、どの角度が最も魅力的に見えるかを判断する経験が求められるからだ。
特に注意したいのは、ソファの裏側が見えるアングルだ。このアングルは、全体の調和を取りにくく、インテリア全体を魅力的に見せるのが難しいことが多い。そのため、できる限りこのようなアングルは避け、空間の広がりや奥行きを強調するアングルを選定することが重要だ。
内観CGパースを制作する際に、まず検討すべきは空間を正面から捉えた構図である。
正面から捉えるアングルにしても、窓から見える景色を十分に表現できる。また、構図の中心に照明器具や家具を配置することで、空間に統一感が生まれ、視覚的なバランスも向上する。
このように、比較的シンプルな方法で空間をより魅力的に見せるため、まずは正面からの構図を検討するのが良い。
以後の作業では、構図の中心線や三分割法のガイドライン(下図参照)を活用し、それを基準に照明や家具などの配置を考えることをお勧めする。これにより、構図がさらに整い、視覚的に魅力的な空間が完成するはずだ。
アングルの設定方法については、以下のリンクの記事で詳細に解説している。参考にしてみてほしい。
3. 家具の配置を調整する
アングルを正面に変更することで、構図の中心が明確になる。家具の配置も中心に合わせて調整しておくとよい。
3-1. リビングのペンダントライト
リビングの照明器具は、もともと構図の中心線から少しずれて配置されていた。このわずかなズレも、空間全体のバランスに影響を与えるため、正確に調整することが重要だ。
3-2. ダイニングのペンダントライト
現在の5灯が高さを変えて配置されている状態が若干騒がしく感じられるので、3灯へ減らす。ダイニングテーブルを照らす意図で設けられる照明なので、高さも下げてテーブル面に近づけ、中心線に合わせて配置する。
3-3. ダイニングテーブルセット・ソファセット
ダイニングテーブルセットやソファ、リビングテーブルの重心も中心線に沿うように調整することで、空間全体のバランスが整い、視覚的な統一感が生まれる。
4. 背景画像の配置
窓から見える景観や建物背後の風景は、ポストプロダクションの段階で合成することで、より美しく仕上がることが多い。ただし、3DCGの環境でも反射や屈折などの光の効果を活かすために、合成予定の背景画像をあらかじめシーンに配置しておくことが重要である。背景画像を合成すると違和感が生まれる・・・と悩んでいる方も少なくないだろう。実際、背景を不自然に感じさせないための調整は難しく感じるかもしれないが、以下に紹介するポイントを意識するだけで、その違和感を軽減できるはずだ。
4-1. 背景画像の準備
まずは、配置して不自然でない背景画像の用意をしよう。なるべく長手で4000ピクセル以上の高解像度画像を選ぶとよい。そして、その画像の地平線がどこにあるのかを確認しておこう。これが後の配置作業において基準となる。
4-2. 3DCGソフトでの設定
次に、3ds MaxとChaos Coronaを使用して、この背景画像を効果的にシーンへ配置する方法を解説する。
まず、背景画像を投影するための平面オブジェクトを作成し、シーン内に配置する。この際、平面オブジェクトのPivotを、画像の地平線ラインに一致させるように調整しよう。
① シーン内にPlaneオブジェクトを追加。縦横の大きさを、背景に配置する画像サイズの縦横比と合わせる。(この場合は、画像サイズが4928×3264ピクセルのため上画像のような設定になった)
② CoronaLegacyMtlのDiffuse colorに画像を読み込ませ、Planeオブジェクトに適用する
③ PlaneオブジェクトのPivotを、画像の地平線のラインに合わせる。
④ 決定したアングルのカメラを選択し、Viewport displayの「Horizon Line」にチェックを入れると、ビューポートに地平線が表示される。
⑤ 先ほどのPlaneオブジェクトのPivotを、地平線ラインに合うように配置する。
⑥ Pivotの高さが地平線から大きく離れないよう注意しながら、大きさや位置を調整し、景色としてよいよい配置を探る
以上のポイントを意識して背景を配置すれば、違和感は大幅に軽減されるだろう。簡単な工夫で効果的な仕上がりを実現できるので、ぜひ実践してみてほしい。
5. 色味の調整
インテリアパースの質を高めるためには、色味のバランスを整えることが重要である。家具や背景の色調を統一し、全体の調和を図ることで、より自然で魅力的なパースに仕上がる。今回は、ソファのクッションや背景画像の色味に改善の余地があると判断し、その具体的な調整方法を解説していく。
5-1. ソファ・クッションの配色
クッションを含め全体を白いレザーで統一してもよいかもしれないが、より深みを持たせるため、アクセントとして少し色味を加えた。配色は全く関連性のないものではなく、インテリアで採用されているものから拝借する。例えば、床やラグに使われている黒を控えめに取り入れ、さらにキッチンの濃い茶系の面材をポイントとして選択した。ただし、キッチンと同じ色を使うとクッションが強調されすぎるため、今回はより明るく薄い茶系を採用している。
5-2. 背景画像の色味
元のパースでは、寒色系を基調としたインテリアや家具に対して、窓から見える景観が暖色系だったため、全体に違和感があった。そこで今回は、色相環を参考にして、背景画像の色調の統一を図るため調整している。
5-3. ラグの色味
以前は暗いフローリングに暗いラグを組み合わせていたが、床が濃く暗い材料の場合には、できるだけ明るめのラグを使うことで、家具の存在感を引き立てることができる。今回はカウハイドラグを使用しているため、床との境界部分に明るい色味が入るよう、UVの調整を行っている。
インテリアの配色について、以下のリンク記事を参考にしてほしい。
6. 小物を配置していく
最後に、このインテリアのコンセプトに合わせて、小物の選定と配置を行う。ダーク系の内装に、レザーソファなど高級感のある家具が揃っているため、全体が少し単調になりがちだ。そこで、小物に少し色味を加え、過度に多くないバランスで配置するのが理想的だと思える。それでは、具体的に解説していく。
6-1. コーヒーテーブル
ソファークッションの明るい茶色に色調を合わせて小物を揃える。抽象的なデザインの置物とガラスコップを三角配置し、ペンダントライトの反射が被らないように、本の位置を微調整する。
6-2. ダイニングテーブル
お皿やナイフ・フォークなどのテーブルセットを置くこともあるが、今回は小物の数を少なめにしている。リビングテーブルのマテリアルに合わせて、ガラスの花瓶とグリーンを配置している。中心から少しずらしているのは、奥にある冷蔵庫のハンドルと重なってしまい、何が置かれているのかが分かりにくくなるのを避けるためである。
6-3. キッチン
この部分に配置する小物は面積が小さいため、少し目立つ色味のものを選んでいる。色相環に基づき、遠すぎない範囲の配色でフルーツを配置した。その他、キッチンらしさを感じさせるアイテムも加えている。
6-4. 観葉植物
画面手前に植物を少し見切れるように配置するのは、インテリアCGにおける基本的なテクニックである。
植物の存在は空間に自然な雰囲気と奥行きをもたらし、全体のバランスを整える役割を果たす。たとえ実際の配置で画面に映り込まない場合でも、植物の位置の調整を行い、見えるように工夫することが大切だ。これにより、パースにおける視覚的な豊かさを引き出し、自然な奥行き感が生まれる。植物の配置一つで、全体の印象が大きく変わるため、細部にまで気を配ろう。
7.まとめ
以上が、インテリアパースの添削内容についての解説である。
今回の事例を通じて、どのような視点でCGパースの制作や改善を行っているか、具体的なプロセスやポイントが理解できたのではないだろうか。特に、アングルの調整や家具の配置、色味のバランス、小物の選定といった要素が、作品全体の完成度を大きく左右することが明確になったと思う。
これらの手法や考え方は、今回のインテリアに限らず、他のシーンや異なるプロジェクトにも応用可能だ。どんな空間であっても、基本となる構図や色彩のバランス、そして視覚的な調和を重視することで、より魅力的なパースを作り上げることができるだろう。
CGパース制作においては、細部へのこだわりが最終的な仕上がりに大きく影響を与える。特に今回のように、プロの視点から見た細かな調整や改善点は、これからCGを学ぶ人々にとっても貴重なヒントになるはずだ。日々の制作において、こうしたポイントを意識しながら、より質の高い作品を目指していくことが大切だといえる。
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