建築パース・CGパース制作のプロが選ぶ3DCGソフト4選とその理由
最近は、建築パース制作のための3DCGソフトが色々あり、どれを選んだらよいのか迷ってしまうはずだ。
時間をかけ習得していく必要があるのに、3DCGソフトの選択を間違い、その努力が無駄になってしまわないかと不安を抱くはずだ。
本記事では、よくある3DCGソフトの一般的な紹介ではなく、建築パース・CGパース制作を目的として外せない5つの基準をもとに、4つの3DCGソフトを厳選して掘り下げ解説していく。
さすがに4つのソフトでは少ないと思ったかもしれない。
しかし建築パース・CGパース制作・3DCG業界に20年以上携わっている筆者が、「建築パースを3DCGで描く」という目的だけを基準に選んでいるので、これで十分だと自負している。
先に紹介しておく。建築パース制作のためのその4つの3DCGソフトはこちらだ。
□ 3dsMAX
□ Cinema4D
□ Blender
□ SketchUP
これらのソフトを、建築パース・CGパース制作のプロ目線で個別に解説していく。
この記事を読めば、自分の目的に合った3DCGソフトを選ぶことができ、後悔のない選択が可能となるはずだろう。
1. 3DCGソフトについて理解しておきたいこと
3Dのグラフィックソフトとしては大きく2種類に分けられるというのはご存じだろうか。「3DCG」と「3DCAD」と呼ばれるその2つについて、まずは理解しておこう。
1-1. 3DCG
3DCGとは三次元の仮想空間におけるコンピューターグラフィックスのことを指す。縦と横の平面的な次元に、奥行を追加した立体世界をベースに、物体作成・質感表現・アニメーションを行い、最終的に2次元に変換する。この一連の作業に利用されるのが3DCGソフトだ。主にアニメやゲーム、キャラクターなどを作成する際に活用される。
例: MAYA・3dsMax・Blender など
1-2. 3DCAD
基本的な考え方は3DCGと同じであるが、正確な寸法を表現することがもとめられ、3次元の設計書として利用される点においては大きな違いがある。主に建築物や車、部品などのモデルを作成する際に用いられる。
例: Fusion360 など
1-3. 2つの違い
3DCADは正確な寸法が重要で、視覚的にわかりやすく情報を伝達できるかが重要となる。寸法が記載された図面を立体化する為の3D製図ソフトと言えるだろう。
3DCGはデザイン要素を立体化させ、視覚的な印象を高めるために用いられるツールである。
建築物を立体化するだけなら3DCADが向いている。しかし建築パース・CGパース制作は、その先の視覚化が重要であるため、今回は3DCGのソフトの中からの選択となっている。
2. 建築パース・CGパース制作3DCGソフトの厳選基準5つ
これから説明していく5つの基準をもとにソフトを厳選している。これらの理由についても解説しておこう。
2-1. 価格
言うまでもなく優先度の高い項目が導入の費用である。3DCGのソフトウェアは他のものに比べるとかなり高額であり、学生は無償利用できるかどうかというのも大事なポイントとなる。
2-2. 情報の豊富さ・学習のしやすさ
書籍・学べるサイトやyoutube動画が一定数あるかどうかは非常に重要である。
なぜなら、3DCGは覚えなけらばならないことがたくさんあるにもかかわらず、日本語で効率よく学べる環境が非常に少ないからだ。
独学で学べないこともないが、効率よく行うには情報のボリュームが重要である。
ユーザー数の多さは、リファレンスの数にほぼ比例するので、マイナーソフトの利用は絶対に避けるべきである。
2-3. 素材の充実
建築パース・CGパース制作には、使用ソフトのフォーマットに適合した素材の多さがポイントとなる。
建築パース・CGパース制作において、樹木・植栽・家具、車など、すべてのモデルを一から自分で作っていたら、限られた時間の中で要求に対応することは困難である。
必要に応じて素材集などからデータを利用して、効率的に作業を進行するのがとても重要である。
2-4. レンダリング画像の美しさ
以前はこの項目もかなり重要度が高かったが、最近はサードパーティのレンダラーが色々なソフトに対応しているので、そこまで大きな差はないだろう。どちらかというと、そのレンダラーの対応状況の有無が選定基準となる。
2-5. 将来性
せっかく時間をかけて習得した3DCGソフトが、ユーザー数の減少や開発会社の方針から消滅してしまうこともある。
10年前まで国産の3DCGソフトが建築CGの分野では主流だった。
その当時、低価格で参考書籍も多数あり、素材も充実していたので入門編としてかなりのシェアがあった。残念ながら、いまでは多数のユーザーが他のソフトへと移行している。
魅力的なCGの表現は、一般的にソフトの習熟度に比例するものである。
なるべくソフトの移行がないように、将来性の高い見込みのあるものを選択することも重要である。
3. 建築パース・CGパース制作3DCGソフト4選
上記5点を考慮した結果、建築パース・CGパースを制作する上でのおすすめ3DCGソフトを選んだ。それぞれ個別のページで詳細を解説しているので読んでみていただきたい。
3-1. 建築パース・CGパース制作厳選3DCGソフトその1 「3dsMax」
3dsMaxはAutodesk社によって開発された、業界をリードする3Dモデリング、アニメーション、レンダリングソフトウェアである。このソフトウェアは特に建築ビジュアライゼーション(建築パース・CGパース)、ゲーム開発、映画制作の分野で広く使用されており、その高度な機能とユーザーフレンドリーなインターフェイスが高く評価されている。3ds Maxを用いることで、ユーザーは複雑な形状のモデリング、リアルタイムの3Dアニメーション、高品質なイメージのレンダリングを行うことができる。
3-1-1. 価格は?
サブスクリプション制度を採用。2024年2月の時点では以下のとおり
¥286,000(税込)/1年間 ¥36,300(税込)/1ヶ月 ¥858,000(税込)/3年間 と非常に高額なソフトである。
3-1-2. 学生版は?
学生や教育機関に対しては3dsMaxの学生版が提供されている。このバージョンは教育目的に限定されており、無償で利用可能である。
>>詳細はこちらから
3-1-3. 無償体験版は?
30日間の限定で、すべての機能が体験できる無償版が提供されている。
>>詳細はこちらから
3-1-4. インディー版は?
2020年8月よりすべての機能をリーズナブルな価格で利用できるインディー版が発表されている。
■対象者:
・ クリエイティブ制作による年間総収入が 1,500 万円未満であること
・ お客様は 10 万米ドルを超えるプロジェクトでライセンスを使用することはできません
・ 1 ユーザーまたは 1 組織につき 1 本のライセンスのみを使用すること
これらの条件を満たすことで、¥42,900(税込)/1年間 で利用することができる。
ソフトウェアの習得にこの期間が割り当てられるのは非常にありがたい。
>> 3ds Max Indie(Autodesk 日本語公式サイト)
弊社ブログでは、3dsMaxによる住宅外観モデリングの方法を解説している。建築CG制作が目的ならば、確認しておくことをおすすめする。
▼詳しくはこちら 建築パース・CGパース4選3DCGソフトの個別詳細記事▼
>> 【初心者向け】3dsMAXとは?建築パース・CGパース制作者目線で紹介
3-2. 建築パース・CGパース制作厳選3DCGソフトその2 「Cinema4D」
ドイツのMAXON computer社による3DCG統合型ソフト。
モーショングラフィックスに強いとされていて、AdobeAfterEffectsとの連携・Redshiftの統合やその安定性からハリウッド映画の中でも多数使われている。
ソフトの価格と作り出せるCGのクオリティバランスの良さから、国内の建築CG制作会社もよく利用されている。
3-2-1. 価格は?
サブスクリプション制度を採用。
通常のプランは年間¥83,885円、月単位の契約で¥11,999円(それぞれ税別)になる。
3-2-2. 学生版は?
無料の学生版は廃止され、学生・教員向けに新しいサービスが提供された。詳しくはこちらのノート記事を参考にして欲しい。
https://note.com/maxonjapan/n/n460c4ef17e77
3-2-3. 無償体験版は?
体験版はこちらのサイトでダウンロードできる。
>>Cinema4D体験版ダウンロード
弊社ブログでは、CINEMA4Dによる住宅外観・椅子モデリングの方法を解説している。建築パース・CGパース制作が目的ならば、確認しておくことをおすすめする。
▼詳しくはこちら 建築パース・CGパース4選3DCGソフトの個別詳細記事▼
>> 【初心者向け】Cinema4Dとは?建築パース・CGパース制作者目線で紹介
3-3. 建築パース・CGパース制作厳選3DCGソフトその2 「Blender」
オランダ生まれのオープンソースの統合型3DCGソフト。
誰でも無料で使えるのに、その機能は3dsMAXやMAYAなでのハイエンドクラスと同等という魅力的なソフト。
単体でも十分強力だが、有料・無料のアドオン(機能拡張、プラグイン)も多数あり
機能を追加して、より扱いやすくしたりカスタマイズができる。
3-3-1. 価格は?
誰でも無料で利用できるオープンソース。これはとても大きい。
習得段階でのコストがかからないのはとてもありがたい。無料だからといって機能制限のある廉価版のというわけでなく、ハイエンドソフトと同等の機能を利用することができる。
最近では高度な機能を利用するには有料のアドオンが必要となり、結果、有料ソフトに近しい費用が必要となるといった声も聞く。
3-3-2.情報の豊富さ・学習のしやすさ
最近では、ソフトの使い方を解説している色々な書籍が発売されている。
建築パース・CGパースを作る目的で構成されたものはないので、興味のある分野について説明してくれているものを選んで学ぶのがよいだろう。
□ 解説書籍
「入門Blender2.9 ~ゼロから始める3D制作~ 」
Blenderの解説書は似たり寄ったりではあるが、選ぶときに気を付けておきたいことそれは、「対応しているバージョン」である。大型アップデート以前のものによる解説のものは選ばないようにするべきだ。
内容は、基本的な用語解説、ダウンロード・インストールからモデリング~レンダリングまで様々な機能の基本を解説している。
カラーでの解説・ボリューム・価格を考えるとバランスがよいと思う。
定価 : 2970円(本体2700円+税10%)
書籍ではないが、Blenderの操作方法を解説したPDFファイルが公開されている。
「3Dモデリングソフト「Blender」の操作を0から学べる1,400ページの解説書が無償公開」
和歌山大学システム工学部の床井浩平准教授のツイートより、
□ Webサイト
Blenderに関する質問、情報交換、オンライン会などを行う無料コミュニティ「みんなのBlender」は参加しておくべきだ。
https://note.com/taka_tachibana/n/nf0c0fd186d40
主宰である映像クリエーター橘剛史氏のツイッターやYoutubeチャンネルも要チェックだ。
Blenderを利用して建築パース・CGパースを制作している有名どころは「Blender Guru」である。
youtubeチャンネルはチェックしておこう。
こちらの動画はとても参考になった。おすすめである。
弊社ブログでは、BLENDERによる住宅外観モデリングの方法を解説している。建築CG制作が目的ならば、確認しておくことをおすすめする。
▼詳しくはこちら 建築パース・CGパース4選3DCGソフトの個別詳細記事▼
>>【初心者向け】Blenderとは?建築パース・CGパース制作者目線で紹介
3-4. 建築パース・CGパース制作厳選3DCGソフトその4 「SketchUp」
アメリカTrimble社が開発・提供している統合型の3DCGソフト。
主に建築・インテリア業界で利用されている。
インターフェイスや操作性が親しみやすく、入門編としては最適なソフトである。
3-4-1. 価格は?
商用利用可能なProバージョンが ¥44,000円(税別)/年額。評価版は30日間の利用になるす。
学生向けのサブスクリプションは ¥8,200円(税別)/年額。
3-4-2. 情報の豊富さ・学習のしやすさ
建築・インテリア業界で多く利用されているだけあり、
建築パースを作成するために特化した解説書籍がいくつかある。
こちらのブログ記事では建築設計事務所が簡単に始められる3DCGソフトとして紹介されている。
>> https://blog.studiounbuilt.com/2017/09/05/1-7/
▼詳しくはこちら 建築パース・CGパース4選3DCGソフトの個別詳細記事▼
>>【初心者向け】Sketch Upとは?建築パース・CGパース制作者目線で紹介
4. 建築パース・CGパース制作3DCGソフト4選まとめ
以上が建築パース・CGパース制作のプロが薦める3DCGソフト4選である。
今では3DCGソフトがたくさんあり、それぞれ特徴があると思うが、建築パース・CGパース制作といった目的に絞れば選択肢はそう多くはない。
誰もが効率的に学び、そのソフトで出来る最大限のことを建築設計やプレゼンに活用したいと考えるはずだ。
今回紹介した4つのソフトウェアは、その願望をかなえることができるものばかりのものである。
特に理由がない場合は、これらから検討をしてみることをお勧めする。
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